「あの卵みたいなものは何ですか?」とお客さま。指で示した木には、緑色の卵のようなものがたくさんくっ付いていました。大きさはひとつが大人の手のひらほどもあるでしょうか。木の上の枝から下の枝まで数えきれないほど、たくさんくっ付いています。
さて、これはいったいなんでしょうか?
じつはこれは…ヒマラヤスギの球果、おなじみ松ぼっくりです。秋に花が咲き、冬を2回越した翌々年に実が熟します。いまは翡翠を思わせる緑色ですが、これから晩秋から冬にかけて茶色く熟してゆきます。
ヒマラヤスギはヒマラヤからアフガニスタンを原産地とするマツ科の常緑高木です。
日本におけるヒマラヤスギの歴史は、明治12年(1879)ごろ、横浜在住のイギリス人ブルークが、インドのカルカッタから種子を取り寄せて栽培したのが始まりといわれています。その実生苗100本が新宿御苑に植えられました。園内には当時、植えられたと思われる木を含め、約380本のヒマラヤスギが現在も生育しています。
ここ中央休憩所近くなど、園内各所で大きな傘のように枝を伸ばした姿が印象的なヒマラヤスギ。冬でも緑の葉っぱを茂らせる常緑樹で、一年ずっと広げたままの緑の傘のなかは、ピクニックの人気スポットのひとつ。
枝葉のなかを通り抜ける風の心地よさと木の香りがただよい、まるで木に包まれているような憩いの空間が人気を集めています。
下の池周辺もたくさんのヒマラヤスギを植栽したエリアです。写真右側のヒマラヤスギは、今年に熟する松ぼっくりと、来年に熟する松ぼっくりを一緒に観察することができました。
こちらの写真のなかに、来年に熟する松ぼっくりが写っていますが見つけられるでしょうか?
正解はこちら(黄色い丸の中)でした。
まだまだ小さな松ぼっくりの赤ちゃんたち。ご覧になる際は枝をじっくり探してみてくださいね。
まもなく6月も下旬となります。6月といえば日本は梅雨とともに衣替えシーズンでもありますね。
御苑の庭園風景を作り上げる木々や草、芝生などの植物も衣替えとばかりに、初夏の新緑色から夏の深々とした緑色へと装いを変えつつあります。緑が美しい季節をどうぞお楽しみください。
(写真:中の池)
2015年6月18日 14:19