2017新宿御苑フォトコンテスト入賞作品【上位四賞】および審査員総評
【主催者あいさつ】
「2017新宿御苑フォトコンテスト入賞作品展」にご来場いただき、誠にありがとうございます。このコンテストは、カメラを通して新宿御苑の自然の素晴らしさを感じ楽しんでいただくため平成3年度から開催され、今年で27回目を迎えました。
今回も北は宮城から南は鹿児島まで全国各地503名のみなさまから1950点の作品のご応募をいただきました。平成3年度の開催以来、歴代9番目となる多数の作品が寄せられ、いずれも甲乙つけがたい力作ばかりでしたが、厳正な審査を経て入賞作品が選ばれました。
写真展には入賞作品とあわせて、審査にあたられた写真家の特別作品を展示いたしました。多くの方々にご覧いただき、新宿御苑の四季折々の表情と自然の美しさを楽しんでいただければと思います。
フォトコンテストの実施及び写真展の開催にあたり多大なるご支援をいただきました、環境省新宿御苑管理事務所、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社ならびに関係各位に厚く御礼申し上げます。
一般財団法人 国民公園協会新宿御苑 会長 福澤 武
【審査員総評】
御苑に初めて足を運んだのは半世紀以上前の小学生時代で、足しげく通うようになったのは写真教室や審査に関りを持った、ここ二十年程になります。
その間に写した画像を見直すと、一見変化が感じられない園内にも大小様々な変化が見られます。大部分は自然に由来するもので、災害や寿命によって先月まであった大木が忽然と姿を消しているのに気付いたこともあります。その一方、ついこの前植栽されたばかりと思っていたものが大きく成長していたり、切り株に芽吹いたひこばえが空に向かって枝を伸ばす様子にほほえましさを感じたりもします。ただこれら全てを撮影しているわけではなく、あの時写しておけば…! という気持ちがよぎることも再々です。
写真の基本的性格は記録で、今回入賞された皆さんの作品も御苑の歴史を語る上で大切な一コマです。とはいえ、その時ここにいたとしてもシャッターを切らなければ何も写りません。私も環境大臣賞を受賞された作品と似たアングルから、雨の日に写したことが何度かありますが、このように透明感のある風景を写せたことはありません。これは写真が一期一会の表現と言われるのをよく物語っていて、自然相手の撮影で同じ瞬間は二度とありません。いい瞬間を切り取るには被写体を知り、気長に付き合うことが大切ですからこれからも機会があれば御苑に足を運び、よりよい瞬間を画面に収めて頂きたいと思います。
写真家 木村 正博
写真家 岡本 洋子
【環境大臣賞】
「奔流」宇田川 健太郎さん
審査中に「奥入瀬みたい」という言葉が聞こえましたが、池から流れ出す水と緑のコントラストが見事ですね。この場所で似たような状況で何度か写していますが、水の透明感をここまで描写できたことはありません。中央の岩に引っ掛かった流木は普段の撮影ではやや目障りになりがちですが、この作品では逆に庭園での撮影を感じさせない画面を作り出しています。
撮影日:2017年10月29日
撮影場所:下の池 擬木橋付近
【環境省自然環境局長賞】
「あと ちょっと」 浅倉 陽子さん
お姉さんに抱かれ、幹から垂れるバナナの房に手を伸ばしている妹さんの姿が微笑ましいですね。子どもたちが着ているものから冬の季節と分かりますが、温室のガラス天井から射し込んだ太陽がハレーションを起こし、室内の暖かさを感じさせる画面になっています。
撮影日:2018年1月6日
撮影場所:温室
【環境省新宿御苑管理事務所長賞】
「新宿深山」 浜田 満広さん
母と子の森近くからイギリス風景式庭園方向にレンズを向け、常緑樹の暗い緑の向こうにブルーの空とピンクの桜を組み合わせた画面構成が成功しています。園内を巡回するガードマンを取り入れたのも悪くないのですが、服の色が周囲に溶け込んでしまいましたね。CMであれば赤い服の女性を配すところですが、色のコントラストが際立つ服装の人物が通るのを待ってもよかったでしょう。
撮影日:2016年3月29日
撮影場所:日本庭園と母と子の森の境界林
【(一財)国民公園協会新宿御苑会長賞】
「晴れ舞台」 峯岸 誠一さん
菊花壇展の大作り菊を始めて見た人の多くは、一本の茎に数百の花を咲かせているのに驚きます。丹精を込めた作品を誇らしげに説明する職人さんの笑顔と菊の様子、それを様々な角度から見る観覧者の様子が端的にまとめられています。職人さんを入れたカットは、カメラを少し右に移動してカエデの幹を省略すると、さらに良かったと思います。
撮影日:2017年11月7日
撮影場所:日本庭園