(公社)園芸文化協会による「新宿御苑菊花壇展観菊会2023」に講師協力を行いました
新宿御苑では毎年11月1日から15日まで、皇室の伝統を受け継ぐ「菊花壇展」を開催しています。新宿御苑の菊花壇展の歴史はいまから100年以上も前、明治37年(1904)に皇室行事「観菊会」で展示する菊を栽培したことに始まります。
★詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
>>新宿御苑の歴史探訪【皇室ゆかりの菊花壇】
11月11日(土)、公益社団法人 園芸文化協会が主催する「新宿御苑菊花壇展観菊会2023」が開催され、(一財)国民公園協会は講師協力を行いました。菊栽培担当職員の丸山秀諭が講師役となり参加者とともに日本庭園で開催されている「菊花壇展」と「栽培所(非公開エリア)」を巡りました。丸山は12年間新宿御苑の菊栽培に携わり、菊花壇展の顔の大作り花壇を担当しています。
始めに新宿門横のインフォメーションセンター2階のレクチャールームにて、講義を行いました。
丸山は「あたかもこの場所で育ったかの様に植えることを目標にしています」という言葉とともに菊栽培についての講義を始めました。鉢が見えている大作り花壇や懸崖菊花壇以外の花壇も、実は鉢ごと土の中に植わっています。どこから見ても直線になるように、多数のスタッフの目視と細かな指示だしを行いながら、微調整し植え付けられています。また、鉢から抜かない理由のひとつとして、花が終わった後に次回の菊花壇用に栽培する親株としての役目があるからです。
講義の後は、日本庭園に7棟ある菊花壇の観賞をしました。
懸崖菊花壇は、崖から小菊が流れ落ちる様に咲く様子を表現しています。懸崖菊花壇の鉢の中には宮内省時代から受け継いだ貴重な鉢もあります。
江戸菊は全て違う品種が植え込まれています。それぞれの菊に名札がついていますが、実はこれは役名で、実際の品種名ではありません。それぞれの名前には、その名を掲げるための条件があり、毎年同じ品種がその名札を付けられるわけではない。という話にお客様は感心されていました。
菊花壇を鑑賞した後は、いよいよ菊栽培所へ。ここは普段は公開していない場所です。
ハウスの中には、まだ多くの菊が栽培されていますがこれらは、表舞台には立てなかった株になります。厳しい目でチェックし、選ばれし菊だけが日本庭園の花壇に植え付けられます。栽培エリアを出る前に、鉢ごとプールに漬け、たっぷりと潅水し、シャワーで葉の汚れなどを流して綺麗になってから晴れ舞台に立つのです。花壇によっては、植えられた後は水が与えられないという話もありました。
本花壇に使用されなかった大菊の鉢を使って、どのように高さの調整をしながら土の中に植えているのかの説明もありました。菊花壇展でご覧いただける大菊は草丈1メートル程ですが、じつは人の背丈以上に育った菊を鉢ごと横に寝かせながら地面に植え込んでいます。大きく育つと、それだけ深い大きな穴を掘る必要があるなど、美しく高さを揃える工夫の話もありました。
新宿御苑では交配作業も行っています。交配するための菊の中で、しべを隠してしまう品種については、花びらを切ってしまうこともあります。
畑には2000種ほどの作出された菊が育てられています。この中で、今後花壇に出せるかもしれないと選ばれ残る菊は約30種ほどです。新宿御苑の菊花壇展に相応しいか、常に厳しい目で選ばれた菊だけが残っていくのです。
参加者の皆さんは、時折、気になったことを質問し、メモをとりながら、新宿御苑が誇る伝統の技術を見学していました。