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庭園を守るお仕事通信月号【温室班】

庭園を守る取り組み

今月は温室班による「タイヨウフウトウカズラの取り木」をご紹介します。

先月は環境月間で、生物多様性の大切さをご理解いただく企画展「ワシントン条約対象植物展」を行いました。
タイヨウフウトウカズラは、現在では小笠原諸島の母島にのみに生育するコショウ科の多年生草本植物です。自然災害による生育環境の変化や日照条件、クマネズミ、アフリカマイマイなどによる食害により減少し続け、個体数が極めて限られています。

温室の小笠原コーナーの手前、熱帯低地エリア通路右側に、2メートル近くまで育ったタイヨウフウトウカズラ(大葉風藤蔓)。大きな葉とコショウ科らしい細長い花が特徴的です。

温室裏の栽培所の棚には、たくさんの鉢植えのタイヨウフウトウカズラがずらりと並んでいます。どれも同じように見えますが雌雄異株で、16種類それぞれ遺伝子の系統が違う苗木です。

7月3日、このタイヨウフウトウカズラなど小笠原の植物の保護増殖事業を率いる京都大学で地球環境学を研究されている瀬戸口浩章教授が新宿御御苑の温室に来館されました。これほどの量の苗を担保しているのは今現在、新宿御苑の温室のみとのこと、管理がよいですねと賞賛をいただくとともに、私たちスタッフに現地母島の生育環境や生育方法など興味深いレクチャーをしてくださいました。

現地、母島にないタイヨウフウトウカズラの系統を確認しながら、取り木によりこれらの苗を増やしてほしいとの依頼を受けました。遺伝子が違う株の間にいい種ができるので、遺伝子情報は多ければ多いほどいいのです。どの遺伝子系統個体が環境変化などに耐えて生き残れるか?という研究の貴重なお手伝いとなります。

28日に実際の取り木作業が行われました。
節から根が出るので水苔を巻いておきます。水苔の中に根がはったら水苔のカップの下でカットします。

鉢で小笠原に持ち込むことができれば、成功率は上がりますが、世界遺産の小笠原には土を持ち込めないので水苔で包んだ状態で送ります。

「タイヨウフウトウカズラが絶滅したところで、何の影響があるの?」と思う人もいるでしょう。けれどもたった一つの種でも、例えばそれを餌にしている他の動植物や微生物の生命に影響を与え、さらに連鎖して意外な生き物までが生息数を減少させることがわかってきています。あらゆる生きものとのつながりによって成り立つ、私たちの暮らし。実際、100年前までは1年間に1種の絶滅のペースが、現在は1年間に40000種が絶滅しており、たくさんの生きものが近いうちに地球からいなくなるといわれています。
希少な野生動植物の保全▼
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/taiyoufutokazura.html


新宿御苑から小笠原の野生に返すのは今回で3回目。御苑で育ったタイヨウフトウカズラの葉が茂り、もとの景色やもとの生態系が母島に戻ってくる日を夢見て、取り木苗を送り出します。

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