庭園を守るお仕事通信10月号【菊班】
菊花壇展の開催が近づき、日本庭園では上家の設置と菊の植え込みが始まりました。11月には7つの上家と2つの露地花壇が日本庭園を華やかに彩ります。
上家とは、木や竹の素材をいかした建造物で、花壇ごとにそれぞれ異なるデザインや技術が施されています。
写真は懸崖菊花壇の上家づくりの様子です。菊だけでなく、上家の結び紐の美しさもみどころのひとつです。各花壇の上家や、菊の装飾の違いにもご注目ください。
菊花壇展の白眉ともいえるのが、大作り花壇。お客様からの人気も高く、新宿御苑の菊花壇展を代表する花壇です。
ひとつの株から約500輪の花を咲かせる圧巻の花壇は、日本庭園の上家の中で形作られます。そのため、大作り花壇の上家は、他の花壇よりも早い段階で作られ、9月中に花芽のついた茎を守りながら3つ株が運びこまれました。
木製の化粧鉢に植えられた株の上に、大きな半円形の骨組みが設置され、これが大作りの基礎となります。
スタッフは、設計図を見ながら、約500本の花茎を骨組みに配置していきます。
花茎を一つ一つ丁寧に調整し、微細な方向のずれも見逃さずに修正を行います。
続いて、大事な花芽を傷めないように、1本1本茎を丁寧にとめていきます。
離れたところから全体を見る目も必要です。少しでもずれていたらすぐに調整します。
「少し池へ」「新宿へ」と菊班ならではの方向指示が飛びます。3つの大作りの株にそれぞれ4~5人のスタッフがついて仕立てていきました。
チームワークを駆使して、花壇の形が整っていく様子はまさに職人技です。
大作り花壇と懸崖造り花壇は、鉢から咲く姿をご覧いただく花壇ですが、その他の花壇では、菊の株が地面に直接植えられます。
菊を鉢ごと土に植えて、高さを調整する為に茎の下部をゆるやかに曲げてから上に伸ばします。
菊が美しい黒土や苔むした地面で育ち、まるで最初からその場所にあったかのように見せるのが腕の見せどころです。
写真は「一文字菊・管物菊花壇」の植え込みの様子です。この春から数回に渡って植え替えが行われ、最終的に大きく生長した株が鉢ごと地面に植えられていきます。
ぜひ注目いただきたい見どころが、新宿御苑独自の「手綱植え」です。
手綱植えとは、神馬の手綱模様に見立てて、黄・白・紅の順に菊を並べる植え方のことです。
一文字菊・管物菊花壇のほかに、大菊花壇も手綱植えの様式で植え付けられます。
大菊花壇は、花びらが花の中央を包み込むように丸く咲く豪華な菊ですが、「手綱植え」によって、新宿御苑ならではの美しい菊花壇として、多くの来園者に愛されています。
菊花壇展の魅力のひとつは、会期を通じて開花が進み、菊の花が次第に姿を変えていくことです。
是非、日々美しく変化してゆく姿もお楽しみください。