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東京農工大学創基150周年記念  講演&野外観察「五感で発見!実や種子の旅と知恵」

イベント・セミナー

東京農工大学創基150周年を記念して、「五感で発見!実や種子の旅と知恵」という講演会と野外観察会が10月5日に新宿御苑で開催されました。
イベントでは、植物生態学者の多田多恵子博士が植物の魅力について語り、その後、園内で参加者と野外観察を行いました。

はじめに東京農工大学のスタッフから多田さんのご紹介がありました。
多田さんは植物生態学者として東京農工大学の非常勤講師を務めておられる理学博士です。
また、NHK・Eテレ『趣味どきっ・道草さんぽ』やNHKラジオ『こども科学電話相談』にも出演していらっしゃいます。
紹介の際には、ご自身の著書にも触れ、「興味があったら読んでね」と参加者に笑顔で呼びかけました。
続いての講演会では、最初に配布された資料の袋の中に、葉や種が入っていました。


多田さんが「これは何の葉っぱでしょう?」とクイズを出し、参加者が挑戦しましたが、なかなか正解が出ません。
そこで多田さんは「ちぎって香りで分かるかな?」とヒントを出すと、そこで「柑橘系だと思います」と正解がでました。
用意されていたのはみかんの葉でした。
「それでは葉を光に透かして見るとどうでしょう。白い点々が見えます。これが香りの貯蔵タンクで、エッセンシャルオイルが入っている場所です」という解説がありました。


次はネコジャラシ(エノコログサ)の葉の説明です。
エノコログサの葉は根元から触るとすべすべしていますが、葉先から触るとギザギザと尖った感触です。じつは葉先には「プラントオパール」と呼ばれるガラス質が付いていて、虫に食べられにくいようにするための植物の工夫なんだそうです。
下の写真はエノコログサの葉の側面の拡大写真です。

拡大写真で見てもギザギザしていることは、よく分かりませんが、手で触ってみるとひっかかりを感じる事ができます。
触ることで分かるこの感触は、視点が大きい人間は普段気付きにくいものですが、小さな動物の目線で考え、五感を使うと見えてくる自然の仕組みです。
多田さんは「『なんで?』と考える力が大事で、考えることが化学につながりますよ」とお話くださいました。


続いて、メグスリノキの種(タネ)が回りながら落ちていくのを例に、植物の「移動カプセル」としての種の役割が紹介されました。
メグスリノキの種は、投げるとクルクルとゆっくり落ちることで、風に乗ってより遠くへ移動し、理想的な場所で芽を出すことができます。
種は究極の移動カプセルであり、空間だけでなく、時間(季節)の移動も可能にします。
また、風に乗るだけでなく、動物によって運ばれることで、植物が育つより良い環境に移動できることもあります。例えば、クサギの種は鳥が食べやすい形と色を持ち、カリンの実は匂いでアピールして動物を誘います。

さらに特別な戦略を持つのがブラシノキ。
何年にもわたって実が木に残り続け、その先にまた花を付けます。そして、山火事が起きてはじめて、実が弾けて飛びます。山火事の後の、灰の肥料と空き地を狙って、次世代を育むという壮大な仕組みです。


今日はあいにくの雨模様でしたが、後半には園内を歩きながら実際に葉や実に触れる観察会が行われました。
植物たちの巧みな戦略を知ると、普段は見過ごしてしまうような自然の工夫がいっそう興味深く感じられますね。
五感を使って植物を観察することで、自然の豊かな知恵や戦略を発見できる貴重な機会となりました。

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