庭園を守るお仕事通信6月号【菊班】
6月の環境月間イベントで「菊栽培所バックヤードツアー」を開催しました。
普段は立ち入ることが出来ない菊栽培エリアを見学できるため、たくさんのお客様が参加されました。
中央休憩所前に集合した後、スタッフの誘導で菊栽培所に出発!
木々生い茂る道を抜けてゲートをくぐると、森が開けた一角に到着。お客様は「広いのねー!」「空が広いわー!」とびっくりしたご様子でした。
最初に栽培所内の畑をご案内しました。ここではクッションマムと呼ばれる丸く育つ小菊を栽培しています。
菊花壇展の期間に、インフォメーションセンター内で催される菊花壇解説展や日本庭園入り口など各所を飾る菊です。
畑では新品種の作出も行っています。菊は、地上部が枯れた後の根から出る芽で育て続けていると、疲弊して弱い株になってしまいます。そこで人工的に掛け合わせをして新しい品種を作ります。新宿御苑の菊花壇展では、紅色、黄色、白色の3色を展示するため、それ以外の色が出た場合は使用できません。その他花壇の条件に当てはまらない株は廃棄(肥し)になります。2000株以上を畑で育てて、次の段階に進めるのは50株ほどです。
懸崖菊の栽培エリアでは、しずく型に仕立てた菊を菊花壇展で一斉に花を咲かせるための技術の話がありました。摘芯する順番や角度を変えることにより全体に美しい形に整えていきます。新宿御苑の懸崖菊花壇の特徴は、放物線を描くように流れ落ちた後に少し内側に入るような形です。
今の時期は、日よけ棚の中で伸びて欲しい茎を上に向けて調整しています。
この日よけ棚では新宿門に飾る予定の大作りも育てています。大作りは摘芯をくり返して、枝を増やしていきますが、どの位置が正面になるのかは、はじめの枝分かれで決まり、それを踏まえて1年以上かけて育てて行くという説明がありました。
大作りは日よけ棚の外からの見学です。この大作り最終栽培エリアには、厳選された8株が定植されて伏せ込みが行われています。
▼伏せ込みについてはこちら
https://fng.or.jp/shinjuku/2024/05/29/20240529-2/
大作りは約300本の挿し芽から始まり、一度目の植え替えで135株が選ばれ、その後の植え替えで28株~18株に。そして最終的に選ばれた8株が11月まで栽培されます。
大作りは前年の夏から挿し芽で育て始めます。挿し芽にする茎は、太ければいいわけではありません。下の写真のように中が空洞になってしまっているものもあるので、茎の表面を見ながら中の状態を予想して茎を選びます。
新宿御苑では挿し芽を取る時にハサミは使わず、引き抜くように取ります。そうすることで細胞を壊すことなく茎をとることが出来ると考えています。
挿し芽してから1年近く経っている大作り菊は、本来なら開花する時期ですが、11月の菊花壇展で咲くように調整します。夜の時間が長くなると菊は開花するので、冬の間は夜間に電気をつけ、夜の長さを短く調整して菊の開花を待たせます。
下部の劣化に備えて、新しい品種の作出も行っています。菊は雌しべと雄しべが隠れた状態で咲きます。耳かきの梵天のようなもので一つ一つ手作業で受粉して育て種を取ります。菊の種はとても小さく、育苗箱で発芽試験を行い、うまく育てば畑に植え付けられます。
育てては選出を繰り返し、菊花壇展に展示される株が決まります。各花壇の条件にあった株が晴れの舞台に展示されるのです。
最後に質疑応答では、多くの質問をいただき、皆さんの菊栽培への興味深さを感じることができました。
ご参加の皆様、ありがとうございました。