庭園を守るお仕事通信6月号【温室班】
6月は環境月間です。
環境月間とは、環境省主唱により6月5日を環境の日、6月の1カ月間を環境月間としています。これは、1972年6月5日に開催された国連人間環境会議を記念して定められたものです。世界各地で環境保全への関心と理解を深め、行動に繋げることを目的としたイベントが開催されます。
新宿御苑の温室では、環境月間特別企画「絶滅危惧植物展」を開催しています。
今年は、新宿御苑の温室で保全している日本産絶滅危惧植物193種が、後世に伝えるべき貴重な植物として高く評価され、(公社)日本植物園協会の「ナショナルコレクション第21号」に認定されました。
ナショナルコレクションとは、秋篠宮皇嗣殿下が総裁を務める日本植物園協会が認定する保全制度で、「野生種、栽培種に関わらず、日本で栽培されている文化財、遺伝資源として貴重な植物を守り後世に伝えていく」ことを目的とした植物コレクションの認定、保全の制度になります。
【写真:ハナシノブ ハナシノブ科 絶滅危惧IA類(CR)】
絶滅危惧種とは、絶滅のおそれのある生きもののことをいいます。環境省は日本に生息または生育する野生生物について、絶滅のおそれのある種をカテゴリーごとにまとめたリストを作成し「レッドリスト」として発表しています。植物の絶滅を引き起こす大きな原因は私たち人間の活動にあります。森林伐採や開発など環境の変化により、生息地そのものが危うい状況に置かれているものも少なくありません。また違法な採取や従来なかった植物が持ち込まれることによって生息場所を追いやられて数を減らしてしまう場合もあります。
【写真:アポイマンテマ ナデシコ科 絶滅危惧IA類(CR)】
植物は本来の生息地で保全することが原則ですが、生息地での存続が困難な状況に追い込まれた種を守るためには、一時的に生息地外において保護することも重要です。新宿御苑は、社団法人日本植物園協会の植物多様性保全拠点園として、また、植物園自然保護国際機構(BGCI)が定める「植物園の保全活動に対する国際アジェンダ」の登録園として、絶滅危惧植物の生息域外保全に取り組んでいます。その取組みのひとつが、種子保存です。種子は植物そのものに比べて小さいため取り扱いがしやすく、場所を取らずに保管することができます。万が一、野生の植物が失われても、種子から栽培し、て増やして自然に戻したりと、研究・保護活動への活用が期待されています。
展示会場では、国内外からたくさんのお客様が来場し、熱心に展示を鑑賞していました。
植物は古くから人間と深い関わりがあります。この機会に、人と生きものとのつながりについて考えてみませんか?