庭園を守るお仕事通信5月号②【菊班】
本日は菊班の5月の作業から「大作りの伏せ込み」をピックアップしてご紹介します。
先日、日除け棚に移された大作り菊は、枝を成長させる為に組んでいた「結い立て」の竹組みから外され、いよいよ最終的な姿に近づいていきます。
まず、菊全体に取り付けられているラフィアやガムテープを枝や茎を折らないように慎重に外していきます。下の写真のように菊の又を固定している箇所は、重要な部分なので外しません。取り外すのは「菊と竹」などの菊と物とがと結ばれている部品です。
根元近くで5つに分枝したグループに分けて、伸びた枝をまとめておきます。こうすることで、「結い立て」の竹組を解体する時に菊が傷まないようにします。そして、5つのまとまった枝の束を横たえて、竹組を丁寧にはずしていきます。
株の正面は最初の摘芯の時から決めて育てていますので、枝の5つの束が向かう場所はおのずと決まっていきます。その束の中で、生長の強い枝や弱い枝でグループ分けしていきます。生長の強い枝は外側に湾曲の状態にし、弱い枝は中心近くで立てた状態にします。その理由は強い枝は伏せる曲げることによって、少し生長を緩やかにし、弱い枝は立てた状態で伸びやすくして生長を促します。
現在、花壇に飾れる候補の8株が選ばれて定植されていますが、日よけ棚に入る時には、株の出来具合で定植される位置が決まります。それぞれの株に順位がつけられ、ハウスの中でも環境変化が少なく安定的な中央には優良株が、風が強い場所や、西日が強い位置には順位の低い株が定植されます。
伏せ込みを行う順番も慎重に考えられています。枝が高く伸びすぎてしまったものがある場合は、風当たりが強くなり折れる危険があるので先に定植します。しかし、1年に一度しか行わない作業なので、作業の手を慣らすため順位の低い株から始め、作業に慣れた後に、優良株の伏せ込みを行います。このように優良株は大切に育てられますが、最後まで本花壇に飾られるという保証はありません。順位が低く、西日を浴びたり、風を受けていた株が、優良株より生長し日本庭園の花壇に展示されることもあります。
梅雨時期や暑い夏を乗り越えて、美しい大作り菊に育ってほしいですね。