庭園を守るお仕事通信12月号【植生班】
雪吊りをご存じでしょうか。
雪吊りは、地域によっては雪囲い・冬囲いとも言い、樹木の枝が雪の重みで折れないように縄や針金を使って吊り、補強することをいいますが、最近では、雪があまり降らない地方でも、冬の風物詩として、雪吊りを仕立てるところが増えています。
ここ新宿御苑でも、2019年から雪吊りを設置しています。
(旧御凉亭から見た雪吊り)
雪吊りには兼六園式・南部式・北部式の3種類の様式があります。
新宿御苑は兼六園式に倣っており、旧御凉亭の前の池にあるクロマツを仕立てています。
どこから見ても美しい雪吊りですが、旧御凉亭から見て最も美しく見えるように仕立てます。
兼六園式の特徴は、直接木の枝を荒縄で吊りこみ、雪の重みで枝が折れることを防ぐ実用的な雪吊りで、東北地方では「りんご吊り」といわれています。
毎年、少しずつ工夫をし、よりきれいに見える形を追求しています。
最初にクロマツをの手入れをして形を整えます。
その後、樹木が傷つかぬように注意しながら帆柱を建て、次に吊り縄をつけていきます。新宿御苑では、見た目もすっきりとして重く見えない2分5厘の荒縄を使用します。形と縄の太さが絶妙にまわりの景色にとけこみますね。
今年の吊り縄は88本です。縄がからまないように、いくつかに束ねて袋に入れてから帆柱先端の頭飾りを立てます。
スタッフがはしごで帆柱のてっぺんまで登り、吊り縄を袋から出し、上と下で連携をとりながら、下にいるスタッフに縄を放り渡します。
縄はたるまないように注意しながら、等間隔になるように、直接マツの枝にしっかりと結び付けます。
クロマツは池に面しているので、足場は池の中にも設置されています。
最後に足場を外して完成です。
冬の日本庭園と雪吊りはまるで絵画のようです。雪吊りによって深みが増し、さらに和情緒をお楽しみいただけます。