【薫風香る季節】
やわらかな陽ざしの下、瑞々しい若葉青葉と清々の香りを届けてくれるかのようなさわやかな風が吹く季節を迎えました。今回は、皇居東御苑にて、清々しい新緑の訪れに笑んでいる花たちをご紹介します。
「ナスヒオウギアヤメ(那須桧扇菖蒲)」
爽やかな風が通り抜け蝶が舞う菖蒲田の一角でハナショウブに先んじて可愛らしい花被を開かせているナスヒオウギアヤメ。青紫色は、『栄華物語』で記されている日本の伝統色。高雅さと優美さを漂わせる花は、私たちを雅やかな平安文化の世界にいざなってくれるかのようです。
「アオスジアゲハ(青条揚羽)」
静かな気配を感じた先に視線を移すと、花から花へ蜜を求めて飛び回る蝶の姿。さわやかな風に乗り優雅に舞う飛胡蝶には、筆舌に尽くしがたい風情を感じます。また、軽やかに自由に舞いやわらかな曲線を描きながら舞う姿からは、正岡子規の俳句「ひらひらと風に流れて蝶一つ」を思い出します。まるで、慌ただしく忙しい日々を過ごす私たちに、心を軽くし、思考を休め、自然に親しむことの大切さを蝶が伝えてくれるかのように感じます。
【諏訪の茶屋】
諏訪の茶屋は、当初は明治45年、吹上御苑内に建てられていましたが、昭和43年の東御苑開園に伴い現在の場所に移築され今に至ります。気品と優美さが漂う外観、そして樹々や葉の翠緑と煌めく鳥たちの声音。全てが調和し、風雅な趣をたたえています。散策の折、足を運ばれてはいかがでしょうか。
【花の教え】
春先から鮮やかに咲き溢れ、私たちの目を楽しませ心に華やぎを与えてくれる花。しかし、自然の理にしたがい、ただひたすらに咲く花。その姿は、誰かの為と思わずに自分の目の前のことに懸命に取り組むこと、そして今この時をひたむきに生きることの尊さと大切さを教えてくれるかのようです。