皇居周辺の濠と浄化施設
(桜田濠)
皇居といえば門や櫓など江戸時代の歴史遺構が注目されますが、
それらを取り巻く「お濠」について、今回はご紹介したいと思います。
江戸城の遺構である皇居ならびに皇居外苑の濠は、1614年(慶長19年)にほぼ現在の姿であったとされています。
現在、桜田濠や千鳥ヶ淵など12の濠(約37万m2)は環境省により管理されています。
(桔梗濠)
江戸時代の皇居外苑濠は、自然地形を活かしながら人口的に作られ、水源は玉川上水の水を引いていました。
当時の濠水は生活用水などにも使われ、自然豊かな環境だったと考えられます。
明治中頃から周辺の改修により千鳥ヶ淵の分断など道路等の整備がなされ、
濠の埋立て・分断が行われましたが、石垣や草地などの景観は基本的に残されてきました。
(大手濠)
玉川上水から濠へ水の供給は明治以降も続いていましたが、昭和45年に停止され以降は雨水に頼ってきました。
昭和30年代には多くの水生植物が生育していましたが
アオコなどの発生により水質が悪化し水生植物はほとんど見られなくなってしまいました。
このような状況を踏まえて平成元年より濠水浄化対策が検討され
平成7年からアオコの除去を目的とした循環濾過方式の浄化施設が稼働をはじめました。
(日比谷濠)
平成25年度からは新設された濠水浄化施設が稼働開始。
日比谷濠からの取水、分水設備への送水については既存施設を活用し高速擬集沈殿方式による浄化施設を新設しました。
近年では運用前に比べるとかなり水質は改善されてきました。
お濠は都市に残る貴重な水辺として生物の生育・生息の場にもなっています。
(千鳥ヶ淵)
お濠は四季折々、様々な姿を私たちに見せてくれます。
春には千鳥ヶ淵周辺は多くの桜に覆われ1年でもっとも華やかな季節になり、秋から冬にかけては渡り鳥を観察することができます。
皇居の前庭として、「日本の顔」とも言える我が国の代表的な景観を構成する要素の一つとして重要な役割を担う皇居外苑のお濠。
今後も環境省指導の下、国民公園協会皇居外苑は、歴史遺構の継承、生物の生息・生育環境の改善に向け、日々業務に取り組んでいきます。