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環境省主催・千鳥ヶ淵環境再生ガイダンスツアーが開催されました

皇居外苑の見どころ

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平成28年1月13日(金)に、環境省皇居外苑管理事務所主催のもと「千鳥ヶ淵環境再生ガイダンスツアー」が開催されました。

今回のガイダンスツアーは、地域の団体や観光事業者等を対象に、皇居外苑の一つで江戸城跡の一部でもある千鳥ヶ淵における環境再生の取組や、様々な利用資源の紹介、それを巡るモデルコースの案内を行うものです。

千鳥ヶ淵と北の丸公園等周辺の自然と歴史の魅力を広め、今後広く利用が進むことをツアーの目的としています。

ガイダンスツアー出発地点は北の丸公園の中央に位置する芝生広場。昭和30~40年代、公園とともに造られた写真の池は、構造上は池の底や護岸にもコンクリ―トが使用されており、現状では必ずしも生物が豊かな場所とは言えません。

環境省ではこの池を活かし、皇居の森と一体となった自然づくりを目指して、昔からこの地域にいた水生植物やトンボ類等の生き物が棲み、子供でも安全に自然を観察したり、生き物と触れ合ったりできる水辺環境や環境整備について検討を行っています。

特にヘイケボタルについては、外苑濠由来の個体を城外増殖した個体の試験的な放流を近々予定しているとのことです。

 

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北の丸公園を後にした一行は、次なる目的地「代官町通り堤塘」へ。地理的に吹上御苑に最も近い代官町通り側の堤塘は、吹上御苑と一体となったタブノキ等の広葉樹林が見られます。また、堤塘上にはエノキの巨木やアカマツなどが点在する歩道(千鳥ヶ淵さんぽみち)も整備されています。

今後、こちらのさんぽみちに哺乳類や鳥類などが皇居の森と行き来できるように配慮しつつ、既存の樹木を活かしながら、皇居の森らしさを感じられる樹林整備計を計画しているそうです。

 

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また、千鳥ヶ淵周辺といえば淵の堤塘に並ぶ、約400本の桜が春に魅せる見事な景観。ソメイヨシノの植栽や侵入木の残地により樹群としての景観が形成されましたが、一方で桜の高齢化や樹群の過密化、大型化が歴史的な景観を変化させ、堤塘の生物相や石垣等遺構に影響しています。

環境省によりますと、今後は、景観の急激な変化が起きないように配慮しつつ、劣勢樹や石垣支障木を整理していく方針とのことです。

千鳥ヶ淵やその堤塘周辺には、都心でありながら希少な生き物も残っています。

水辺では、環境省により絶滅危惧種に選定されているベニイトトンボ、ジュズカケハゼなど全国的にもまれな種が確認されており、その他都心ではほとんど見られなくなったヘイケボタル(牛ヶ淵)や、天然記念物に指定されているヒカリゴケ(千鳥ヶ淵)も生育しているのだそう。これらの希少動植物はいずれも、濠、堤塘、石垣という江戸城から受け継がれてきた環境を生息・生育の場としており、歴史とともい継承されてきた遺産といえます。

また、千鳥ヶ淵側の土手にある石垣や堤塘は、皇居吹上の豊かな自然を千鳥ヶ淵や北の丸公園とつなぐ重要な場所。土手上の樹木が大きくなりすぎて不安定にならないことや、土手の土砂が流出しないような管理も必要です。

その一環として行われたのが、写真にある「粗朶柵(そださく)」の設置。雑木を切りとった樹の枝を編み込んで作った土留め柵である粗朶柵は、一般的にナラ・カエデ・カシなどの枝が使用されています。自然の材料を使用するため、景観や生態系に配慮することができ、文化財である石垣、堤塘影響を与えない工法として採用されました。さらに、柵の後ろについたヤシ繊維を用いたマットで雨水を吸収することで、大量の雨水が歩道へ流出しないよう工夫されています。

 

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千鳥ヶ淵堤塘を後に、次なる目的地「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」へ。

敷地面積約5,000坪という広大な苑内は、常緑樹を主とし、そこに欅など落葉樹を混じえるといった戦没者墓苑に相応しい厳かさ、静けさを保つ工夫がなされています。

 

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こちらの墓苑は先の大戦において海外で亡くなられた戦没者の御遺骨を納めるため、昭和34年、国により建設された「無名戦没者の墓」です。

納められている御遺骨は、昭和28年以降政府派遣団が収集したもの、及び戦後海外から帰還した部隊や個人により持ち帰られたもので、軍人軍属のみならず海外において犠牲となられた一般邦人も含まれており、いずれも遺族に引き渡すことのできないものです。

 

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墓苑東側の緑に囲まれた一角には、平和記念碑(引揚)と追悼慰霊碑(戦後強制抑留)が建立されていました。

「旧ソ連による戦後強制抑留」や「終戦直後の混乱した状況下における外地からの引揚」により、尊い命を失われた方々を追悼し、このような悲劇を後世に継承することにより、永遠の平和を祈念する、という趣旨から建立されたのだそうです。

 

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続いて向かったのは、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の向かい側に位置する「千鳥ヶ淵ボート乗り場」。この場所では、環境省皇居外苑管理事務所の飛島次長より、お濠の成り立ちと水環境改善の取組みについて説明がありました。

皇居外苑の濠はかつて、玉川上水からの水が供給されていましたが、昭和40年にはその水供給が停止され、それ以降は水源を雨水に頼る状況になりました。一方で、濠への落ち葉、ごみ等の流入、東京都の合流式下水道からの雨天時の越流水の影響などにより、皇居外苑の水質は徐々に悪化し、夏から秋にかけてアオコの大量発生が問題となっています。

 

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その問題に伴い、本計画の一環として環境省が試験的に行っている千鳥ヶ淵から下流の濠の「かいぼり」が挙げられます。「かいぼり」は、池や濠の水位を一時的に低下させて、濠底を露出させることをいいます。そうすることで、水質の悪化の一要因である堀底からの汚濁成分の発生を抑える効果が期待されるとともに、ごみの回収、外来生物の駆除などの生態系改善、水生植物の管理など様々な対策を行うことができるのです。

(写真は「かいぼり」によって約1m水位が下がった濠の際を歩く参加者)

また、平成6年と平成25年に導入された濠水浄化施設の運用や補給水確保の検討・実施等も行われ、徐々に水質は改善されています。

来る東京オリンピック・パラリンピックはもちろん、その後に向けて、自然、景観、利用など様々な面から環境再生が進められる千鳥ヶ淵や皇居の森と一体となった貴重なフィールドは、今後ますます魅力的なものになるのでしょうね。

散策に最適なこれらの場所で、自分だけの『さんぽ道』を探してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

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