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<特集>~皇宮護衛官(騎馬隊)について~

特集

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皆さんは「皇宮護衛官」という存在をご存知ですか?皇宮護衛官は天皇皇后両陛下および皇族各殿下の護衛と、皇居や御所等の警備を専門に行う人たちのことです。

 

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今回の特集では、信任状捧呈式の際に各国の大使や公使が乗られる「儀装馬車」を護衛する「騎馬隊」にスポットをあて、訓練の様子や、馬の飼育・調教等について、騎馬隊員である皇宮護衛官やその指導にあたる警察庁技官の方々から直接お話しを伺いました。普段私たちが見ることのできない皇居の「騎馬隊」に迫ります。

 

 

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今回取材を行うにあたりご協力頂いたのは、皇宮警察本部警務課調査官の戸田さんです。戸田さんはかつて騎馬隊員として信任状捧呈式にも出られていた皇宮護衛官でした。現在は皇宮警視となられ、広報官や音楽隊長を務めるなど、幅広くご活躍されています。

 取材日当日、特別に厩舎と馬場での訓練を見学させて頂きました。

(※写真は「皇宮警察本部厩舎」)

 

 

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はじめにご案内頂いた皇居内の一角に位置する厩舎では、信任状捧呈式で護衛官が使用する馬が計14頭飼育されていました。建物内は天井部分に設置された窓から取り込まれる太陽光により明るく開放的な空間で、馬一頭一頭がリラックスした様子で餌を食べたり、掃除をする護衛官の様子をのんびり眺めたりと、とても落ち着いた雰囲気でした。

 

 

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馬の名前は新馬がやって来た際に職員に募集をかけ、人気投票を行い命名されるそうです。煌瑛(こうえい)や桐誉(とうほ)、皇優(こうゆう)など、皇居の馬に相応しい名前が多く付けられている事が印象的でした。

 

 

 

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厩舎のすぐ側に位置する訓練場(馬場)では、3頭の馬がウォーミングアップをしていました。護衛官の皆さんは、技官の方の指示で馬の速度を調節したり、鐙(あぶみ)をはずしてバランス感覚を養ったり、確実に馬をコントロールするための練習としてハードルを飛び越えたりと、信任状捧呈式で起こり得るあらゆる事態を想定して訓練されていました。失敗が許されない舞台で外国の大使を護衛するという非常に責任ある任務を遂行するための乗馬訓練は、本番の華やかな雰囲気とは相反する、緊張感溢れるものでした。

 

練習後、インタビューにご協力頂いたのは皇宮警察本部護衛第一課警察庁技官の佐藤さんと、同じく護衛第一課側衛官の岩井田さんです。佐藤さんは国体出場経験のある乗馬のエキスパートでいらっしゃいます。岩井田さんは天皇皇后両陛下のお側で護衛を担当する側衛官ですが、騎馬護衛にも従事されています。そんなお二人にいくつか質問をさせて頂きました。

 

 

 

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Q.お二人のお仕事内容について教えて下さい。

A.佐藤さん:私は技官ですので、騎馬隊(皇宮護衛官)の指導のほか、使用する馬の調教や飼育などの仕事をしています。

A.岩井田さん:私は皇宮護衛官として、普段は天皇皇后両陛下の護衛に従事しており、信任状捧呈式が行われる場合には、その騎馬護衛にも従事しています。非番の日など時間があるときには今日のように先生(佐藤さん)の下で訓練を行っていますが、信任状捧呈式の本番前には特に重点的に訓練を行い、騎馬護衛に備えています。

 

Q.お二人の一日のスケジュールを教えてください。

A.佐藤さん:護衛第一課の護衛馬担当技官のスケジュールを紹介しますと、まず朝5時頃に馬のエサやりや厩舎の清掃を行い、9時半から11時半まで護衛官の指導と新しい馬の調教をします。お昼のエサやりを終え、昼を挟み、午後の訓練は13時半から15時頃まで、馬の手入れを含め行います。その後は事務処理等を行い、17時15分に終了。概ねこのような流れです。

 

A.岩井田さん:私は護衛第一課の護衛実施担当として天皇皇后両陛下の側衛官をしています。天皇陛下及び皇族の方の直近で御身辺の護衛に従事する皇宮護衛官を側衛官といいます。普段は両陛下のお住まいである御所や各種行事が執り行われる宮殿等で勤務しており、両陛下がお出かけの際には都内、地方を問わず側近護衛に従事しています。御所の勤務は交代制(24時間4交代)で行います。騎馬訓練は、午前と午後の2回行われていますので、本日のように非番の日や通常の勤務の合間に皇居内の馬場で訓練を行っています。通常の側衛官としての勤務と騎馬訓練との切り替えや時間を作るのがなかなか難しいですね。

 

Q.騎馬隊員(皇宮護衛官)の方が使用する馬の種類について教えてください。

A.佐藤さん:馬の種類は、サラブレッドが12頭、アングロアラブが1頭、セルフランセが一頭で、計14頭です。サラブレッドの多くは4歳くらいまでは競走馬として走っていた馬たちです。競走馬を引退し、乗馬クラブに引き取られた時点で、こちらで情報収集をして大人しい馬を引き取るという流れになっています。

 

Q.使用する馬は雄雌決められているのでしょうか?

A.佐藤さん:使用している馬は、全て去勢をしている「せん馬」と呼ばれるオスの馬です。去勢したオスの馬は大人しくなるといわれています。メスは発情期になりますと神経質になり扱いにくいことから、オスの馬を使用しています。

 

Q.それぞれの馬に担当の護衛官は決められているのですか?

A.佐藤さん:馬の担当は、その日の馬のコンディションを見て、技官が担当となる護衛官を決めるので、一頭の馬を一人の護衛官が毎回担当するということはありません。ここ皇居にやって来る馬はほぼ競走馬ですので、最初は早く走るという調教だけを受けている状態です。儀式の時に使用できる馬にする為には、ゆっくり走ったり、障害物を飛んだりというような調教が必要となりますので、はじめのうちは技官5人の中である程度担当を決めて、儀式に対応できるよう調教していきます。

 

Q.普段の練習(指導)で気を付けていることや大変に感じる事は何ですか?

A.佐藤さん:訓練の際には厳しい事も言いますが、馬に乗るという事は当然、大変危険が伴う事なので、本番の緊張感や重圧に負けないくらいの精神力がつけば、という気持ちで指導しています。

 

A.岩井田さん:信任状捧呈式の本番では、先生はもちろん、誰の力も借りることはできません。問題が生じた場合は自分自身で解決するしかありませんので、突然のアクシデントにも落ち着いて対処できるよう、いかに一回の訓練を充実させるか、という事と、先生の指導を従順に守ることをいつも念頭に置いています。実際に信任状捧呈式の本番中、周囲の観光客の歓声に馬が驚いて暴れ出したりするアクシデントが度々ありましたが、そんな時には瞬時に先生の言葉を思い出し、難を逃れたという経験が幾度もあります。馬は一頭一頭気質が異なるので、先生の指導を思い出しながらそれぞれの馬を扱うことを心掛けています。信任状奉呈式は回数を重ねる程様々な経験をするので、経験値が上がれば上がるほど慎重になります。毎回大変な緊張感を味わいながら任務に就いています。

 

Q.仕事の気概ややりがいについて教えてください

A.佐藤さん:馬が乗る人を育てるので、良い馬を育て調教し、補足で私たち指導官が護衛官に教えるという形を理想としています。そういう風に馬それぞれの役割分担ができる状態、儀式にも使用でき、慣れていない護衛官を乗せても大人しく走ってくれるような馬になった時は、非常にやりがいを感じますね。馬は私にとって、可愛い動物というよりも仕事のパートナーであると思っています。乗っている人間はもちろんですが、私がイメージしている動きと同様に、馬も動いてくれると良いな思います。また、自分が指導している護衛官の人たちが信任状捧呈式で無事立派に勤めを果たしてくれた時も、やりがいを感じますね。

 

A.岩井田さん:信任状奉呈式の騎馬護衛は、護衛一課の側衛官が従事することになっています。信任状捧呈式は外国の大使にとって重要な儀式であるとともに、「皇室用車馬を一行送迎の乗用に供し、護衛として皇宮護衛官を附ける。」とされています。普段は天皇皇后両陛下の側近護衛に従事する側衛官が騎馬に乗って皇室用馬車とともに大使のお迎えに上がり、大使馬車の直近で騎馬護衛に従事し、外国大使を皇居の宮殿まで無事に送迎することにとても意義があると思っています。私は、天皇陛下のお使いであると思い、騎馬護衛に従事しています。この任務は、皇宮護衛官に採用され、騎馬訓練員に選ばれ、厳しい訓練を受けた上で、隊員・隊長になるなど様々な条件をクリアして初めてできる任務ですので非常にやりがいを感じています。

 

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今回の取材を通して、華やかな信任状捧呈式は、各国の大使が乗られる儀装馬車の護衛という特別な任務に就かれる騎馬隊の皆さんやそれを指導する技官の方達の、地道な訓練と任務に対する強い信念により成り立っているものだと強く感じました。

 

今後も特集記事では、皇居や皇居に関わる方々へのインタビューはもちろん、観光の際に役立つ情報等随時掲載してまいりますので、どうぞお楽しみに。

 

皇宮警察に関する詳細はこちらをご覧ください

 

http://www.npa.go.jp/kougu/index.html(皇宮警察本部 ホームページ)

 

 

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