<特集>~皇居の儀装馬車について~
皆さんは皇室の重要な儀式を行う際に使用される『儀装馬車』をご存知ですか?
「外国からの新任大使を宮殿まで送迎する」という特別な役割を担う儀装馬車。今回の特集は、この儀装馬車について宮内庁から頂いた情報や資料をもとにご紹介いたします。
なお、宮殿への運行日時やルート等に関しましては宮内庁ホームページ並びに、当協会ホームページでも掲載しています。
【儀装馬車について】
儀装馬車は、皇室の重要な儀式を行う際に使用される、美しく飾られた馬車です。
儀装馬車には1号から4号まであり、そのほとんどが明治の終わりから昭和の初めに製造されたもので、美術品的価値も有しています。儀装馬車4号は、外国からの特命全権大使が新任に当たって、天皇陛下に信任状を捧呈する儀式(信任状捧呈式)の際、大使の送迎に使用されています。
新任大使の送迎に馬車を使用している国は、世界的に見ても英国やスペインなど数か国ですが、我が国の場合、自動車より馬車を希望する大使が多く、国際親善の実を挙げているとのことです。
【儀装馬車1号の概要】
大正3年、国内において製造
船底型、漆塗りで車体の胴は海老茶色、重量1,398kg(鳳凰含む)、長さ4.48m、幅1.93m、高さ3.27m(鳳凰含む)、8頭立6頭曳の騎馭(きぎょ)式、4人乗りの馬車です。
屋根に鳳凰を戴き、車体の上縁全体に菊葉の彫刻と中央に菊花御紋章を金色で装飾し、車体の胴両側に金色菊葉唐草模様及び金高蒔絵の御紋章があります。
昭和3年の「即位の礼」の際に昭和天皇が使用されました。
なお、当馬車は、大正3年に座馭(ざぎょ)式8頭立6頭曳として製造され、大正4年の即位の礼で使用されましたが、昭和3年に座馭式から騎馭式に改造及び大修復を行い同年の即位の礼で使用され、現在に至っています。
【儀装馬車2号の概要】
昭和3年、宮内省主馬寮(しゅめりょう)工場において製造
船底型割幌(ふなぞこがたわりほろ)、漆塗りで車体の胴は海老茶色、重量1,125kg、長さ4.51m、幅1.87m、高さ2.24m、6頭立4頭曳の騎馭式、4人乗りの馬車です。
車体の胴両側に金色菊葉唐草模様及び金高蒔絵の御紋章があります。
平成2年の「即位礼及び大嘗祭後神宮に親謁の儀」の際は、2頭曳の騎馭式で使用されました。
【儀装馬車3号の概要】
昭和3年、宮内省主馬寮(しゅめりょう)工場において製造
船底型割幌、漆塗で車体の胴は海老茶色、重量1,098kg、全長4.52m、幅1.91m、高さ2.24m、2頭曳の座馭式、4人乗りの馬車です。
車体の胴両側に金色菊葉唐草模様及び金高蒔絵の御紋章があります。
平成2年の「即位礼及び大嘗祭後新宮に親謁の儀」の際に皇后陛下が使用されました。
また、昭和27年の立太子の礼及び皇太子成年式、昭和55年の徳仁親王成年式、平成3年の立太子の礼などの儀式にも使用されました。
【現在使用している儀装馬車4号の概要】
大正2年、国内において製造
船底型割幌、漆塗で車体の胴は海老茶色、重量1,098kg、全長4.51m、幅1.90m、高さ2.24m、2頭曳の座馭式、4人乗りの馬車です。
車体の胴両側に金高蒔絵の御紋章があります。
昭和60年の文仁親王成年式などの儀式に使用されました。
信任状捧呈式の際、大使の送迎にも使用されています。
〇用語の説明
① 8頭立6頭曳の騎馭式
前騎2頭を前に立て、馬車に6頭の輓馬をつなぎ、つないだ輓馬に御者が騎乗して馬を操作し、馬車を曳く方法です。(つないだ前馬・中馬・後馬の各1頭に騎乗し、各1頭を併馬します。)
(配置図)
② 6頭立4頭曳の騎馭式
前騎2頭を前に立て、馬車に4頭の輓馬をつなぎ、つないだ輓馬に御者が騎乗して馬を操作し、馬車を曳く方法です。(つないだ前馬・後馬の各1頭に騎乗し、各1頭を併馬します。)
(配置図)
③ 2頭曳の座馭式
馬車に2頭の輓馬をつなぎ、御者が御者台に座って、2頭の手綱を握って馬を操作し、馬車を曳く方法です。
(配置図)
④ 舟底型(ふなぞこがた)
車箱が船の底型のように製作され、前後4本の吊りバネで車箱を吊り上げる構造になっています。
⑤ 船底型割幌(ふなぞこがたわりほろ)
車箱が船の底型のように製作され、前後4本の吊りバネで車箱を吊り上げ、幌は後方に割れる(畳める)構造になっています。
※信任状捧呈式の馬車列運行情報に関しましては、宮内庁ホームページにて詳細をご覧いただけます。(当協会ホームページにおいても、情報発信を行っていきます)
http://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/kyuchu/shinninjo/basha.html