重要文化財・近代美術館工芸館
皇居外苑は、朝から厚い雲に覆われ、雨が降ったり止んだりの不安定なお天気となっています。
しっとりした空気を感じながら、本日も皇居外苑散策スタートです。
今回は、皇居の北側、緑豊かな北の丸公園内に位置する、赤レンガ造りの重要文化財をご紹介します。
以前ご紹介した北白川宮能久親王(きたしらかわのみやよしひさしんのう)像そば、緑に囲まれた一本道を抜けてすぐの場所に、東京国立近代美術館の分室である工芸館は現れます。
皇居周辺の赤レンガ造りの美しい建築物としては東京駅や法務省本館が有名ですが、この工芸館もその一つ。レンガ造り独特の凛とした風格と典雅な美しさのゴシック建築独特の味わいは、歴史上、建築史上貴重なものといえるでしょう。
工芸館入り口に設置されているこちらの石碑に刻まれている通り、この建物はもとは「旧近衛師団(きゅうこのえしだん)司令部庁舎」でした。
1966年(昭和41年)の北の丸地区整備にあたり、取り壊しの運命にあったところを「明治洋風煉瓦建築の一典型」と惜しむ声が上がり、「国指定重要文化財」として残され、現在に至っています。
1911年(明治43年)陸軍技師、田村鎮(やすし)の設計により設立されたこの建物は、現在国立近代美術館の工芸部門の展示施設として使用されています。
手前の芝地には美術作品、橋本真之作の「果樹園ー果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実(1978-1988)」の展示があり、その大きさ、独特な雰囲気が訪れる人々を魅了しています。
ふと建物の下部を見ると、通風口に陸軍のマークである星の意匠をモチーフとした枠がはめられていました。
このマークが使用されるようになったのは明治33年。近代化が進んだ陸軍では「陸軍服制」で軍服に星の刺繍をつけることが決定しました。弾除けのおまじないとして星マークを使用していた西洋の軍隊を真似たとされています。
緑の中に突如現れるレンガ造りの美しい建築物、近代美術館工芸館。散策の際には、館内はもちろん、歴史ある貴重な建物として、外観もじっくりとお楽しみ下さい。