新宿御苑特別企画「大正・昭和の歴史史料よりひもとく皇室庭園新宿御苑の桜の歴史」を開催

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 シュゼンジカンザクラオカメカンヒザクラカンザクラなど早咲きの桜がみごろをむかえた園内。新宿御苑は約65種1000本の桜が生育し、2月の寒桜から4月下旬の菊桜まで長い期間にわたって桜を愛でられるのが大きな魅力となっています。
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 桜の開花シーズンにあわせて、エコハウス展示室(レストランゆりのき内)では、特別企画「大正・昭和の歴史史料よりひもとく皇室庭園新宿御苑の桜の歴史」を開催しております。
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 明治39年(1906)に皇室庭園として誕生した新宿御苑では、国際親善を目的とした皇室行事「観桜会」が催されました。新宿御苑の礎を築いた福羽逸人は、パレスガーデン誕生に向けて全国から桜を収集して庭園内に植栽し、「本邦における名花の御苑たる」と称しております。
 会場では、約100年の歴史を受け継ぐ新宿御苑の桜について、来歴を記した史料や精密画などを交えて魅力をご紹介いたします。
(写真:昭和13年~15年に新宿御苑の職員が描いた桜の精密画より一部)
 
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 明治時代、国際親善のために始まった皇室行事のひとつが「観桜会」でした。明治14年(1881)に皇室主催の桜の鑑賞会「観桜御宴」が吹上御所で行われ、毎年4月に催されました。
 この頃の新宿御苑は宮内省の所管で、皇室献上用の御料野菜や果物の栽培を行っていました。花きは宮中晩さん会の装飾花に用いられ、洋ランをはじめとする温室植物の収集、研究、改良も盛んに行われ、温室の設備も拡充していきました。また、桜や菊など日本の代表的な花き栽培にも力をそそぎました。
(写真:東京内藤新宿 営業案内カタログより桜を紹介したページ)
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 明治16年(1879)から大正5年(1916)まで浜離宮を会場としていた観桜会でしたが、明治39年に皇室庭園「新宿御苑」が完成すると、大正6年より新宿御苑で催されることになりました。その後、昭和13年(1938)まで新宿御苑で観桜会が行われました。
(写真:『事典 観桜会・観菊会全史 戦前の<園遊会>(川上寿代 著)』ほか)
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 大正7年(1918)から大正9年にかけて、新宿御苑では観桜会に向けて3つの事業が行われました。
 まず始めに園内の在来種の調査が行われましたが、当時既に山桜、里桜あわせて18種1560本のサクラが植栽されていたと記録されています。
 同年に全国の都道府県知事宛てに各地における桜の自生種調査を依頼し、名称や種類(山桜或は里桜等)、来歴、花期、花色などの調査を行いました。
 翌年の大正8年には前年の桜調査結果を照合し、2府22県2廰2総督府へ特産品種を中心に注文を行いました。同年12月までに全国各地から到着した桜の苗木及び穂木はおよそ188種1140本にものぼりました。収集した桜は、翌年の大正9年春に園内の圃場に植栽されました
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■全国各地より送られた主な桜を一部ご紹介いたします
 北海道地方など…ミヤマザクラ、エゾヤマザクラなど
 東北地方…箒櫻、田打櫻、小櫻(八重薄紅)など
 北陸地方…龍燈櫻、菊櫻、泰山府君など
 関東甲信地方(東京除く)…櫻川香、手提灯櫻、神代柳葉櫻など
 東京…吉野櫻、荒川匂、一葉、関山、普賢象、御衣黄など
 東海地方…四季咲櫻、綠蕚櫻、姥櫻など
 近畿地方…帆掛櫻、夜櫻、奈良櫻、漣など
 中国地方…大野サン櫻、早山櫻、旭櫻など
 四国地方…十六日櫻、靑柳櫻、元日櫻など
 九州・奄美・沖縄地方など…緋寒櫻、大鵯、有明、時金など
 
 桜の送り主は、64種122本ともっとも多くの桜を新宿御苑に提供した駒場農科大学農場(東京大学農学部の前身)をはじめ、荒川堤の桜の植樹と保護育成に取り組み、東京市が米国に桜を贈る際に尽力した船津靜作や、綠蕚櫻を牧野富太郎に送ったことで学名ヤマデイのルーツにもなった山出半次郎などの名が記録されています。
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(写真:昭和13年~15年に新宿御苑の職員が描いた桜の精密画にも同名の桜が一部記録されています)
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 明治時代の内藤新宿試験場から皇室庭園への変遷において活躍した人物が福羽逸人でした。福羽は安政3年(1856)に島根県津和野に生まれ、明治10年(1877)に21歳で内藤新宿試験場の実習生となりました。明治31年(1898)に新宿御苑の総責任者となり、明治39年に現在の庭園様式である皇室庭園「新宿御苑」を完成させました。
(写真:福羽逸人)
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 福羽は著書『回顧録』において「新宿御苑は桜の本数が多く、種類数も他に例のない、まさに日本における名花の御苑である」と記しており、特に八重桜の一葉と普賢象を「観桜会の時に賞玩すべき品種」としています。
(写真:『現代庭園図説』、福羽逸人『回顧録』)
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 庭園の誕生から110年以上が経過しましたが、新宿御苑は現代においても八重桜の一葉を代表品種とし、国内外の幅広い世代のみなさまにお花見の名所として親しまれています。
 観桜会にルーツを持ち、明治の頃より受け継がれる御苑の桜。時代を超えて、新宿御苑の歴史とともに歩んできた桜の花々の想いにふれてみませんか。
(写真:桜ウォッチャーおすすめ!新宿御苑の楽しみ方)
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 みごろをむかえた早春の桜の鑑賞とともに、ぜひエコハウスにも足をお運びください。
 
■新宿御苑特別企画「大正・昭和の歴史史料よりひもとく皇室庭園新宿御苑の桜の歴史」
【日時】2018年3月6日(火)~5月予定(予定)
    9:00~16:30
【会場】エコハウス展示室(レストランゆりのき内)
 
■春の特別開園期間は毎日開園します
【春の特別開園期間】平成30年3月25日(日)~4月24日(火)
 ※特別開園期間中は年間パスポートの発行を休止いたします。

2018年3月13日 10:00

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