「我が宿の
時じき藤の めづらしく
今も見てしか 妹が笑まひを」
大伴家持『万葉集』
(私の家に季節外れの藤が咲きました。めずらしいその花のような、あなたの笑顔をいま見たいものですね)
日本庭園でフジ(藤)の花がみごろをむかえました。そよ風に揺れるうす紫色の花房が、いまが盛りと水辺を彩ります。
フジは本州から九州の山野に自生する、つる性のマメ科植物。公園や庭にもよく植えられていて、つるになる性質をいかして棚づくりに仕立てられます。
新宿御苑には日本庭園内に2か所の藤棚がありますが、今年はこちらの上の池寄りの藤棚が花つきが良くおすすめです。
「かくしてそ
人は死ぬといふ 藤波の
ただ一目のみ 見し人ゆゑに」
(こうして人は死ぬというのですね。藤波のように忘れがたい、ただ一度だけ見たあの人に恋して)
フジは古い時代から人々に愛でられた花のひとつで、日本最古の和歌集である『万葉集』にもフジの花がいくつも登場します。
恋心や募る思いを詠んだ歌が多く、花言葉も「恋に酔う」「決して離れない」など、繊細な印象の花ながら、どこか情熱的な一面も感じられます。
人気の旧御凉亭前の藤棚は、今年は花数が少なめといった様子。
まだまだつぼも多いものの、こちらもゴールデンウイーク中に咲きすすみ、みごろをむかえそうです。
春の桜シーズンも終わり、園内はさわやかな新緑の季節をむかえました。
初夏の新宿御苑で憩いのひと時をお過ごしください。
(写真:イギリス風景式庭園のユリノキも咲きはじめました!)
2017年5月 1日 14:00