ドングリをはじめ、コムラサキやウメモドキの木の実がみごろをむかえ、みのりの季節をむかえた新宿御苑。母と子の森のイチョウの木の下には、秋の味覚でおなじみ、ギンナンがたくさん落ちています。
ギンナンといえば、モチモチとした食感が特徴で、茶わん蒸しや炊き込みご飯、かき揚げなどの料理を、季節感たっぷりに演出してくれますね。
イチョウは雌雄異株で木に性別があるため、ギンナンがなるのは雌木だけです。街路樹などは実がならない雄木が多く植えられていますが、新宿御苑には雌木と雄木どちらとも植栽しています。
(写真:新宿門近くのイチョウ〔雄木〕)
(写真:西休憩所近くのイチョウ〔雌木〕)
※ギンナンは素手で触ると、かぶれる場合がありますのでご注意ください。
※新宿御苑では動植物の採取、持ち込みはご遠慮いただいています。みなさまのご理解ご協力をよろしくお願い致します。
イチョウは中国を原産とするイチョウ科の落葉高木で、日本には仏教伝来とともに渡来したと考えられています。
名前は、葉っぱの形から名づけられた、漢名の鴨脚(ヤーチャオ)に由来するものといわれています。
木そのものの起源はさらに古く、1億5千万年以上前、恐竜が生きていた中生代・ジュラ紀にまでさかのぼります。この時代にはたくさんのイチョウの仲間が分布していましたが、その後の氷河期には、中国で自生する1種類のみを残して絶滅してしまったといわれています。
(写真:イギリス風景式庭園のイチョウ)
イチョウは、木材として有用で、耐火性があり、繁殖力が強く、栽培育成がしやすいことから、公園や街路樹など、身近によく植えられています。東京、神奈川、大阪の都道府県の木にも選ばれており、身近な木として親しまれる樹木のひとつではないでしょうか。
秋の紅葉シーズンには、カエデとともに紅葉が人気を集めます。10月現在は、まだ青々とした緑の姿ですが、毎年11月中旬ごろより、鮮やかな黄金色に染まり、紅葉のみごろをむかえます。
秋の紅葉の名所といえば、明治神宮絵画館前のイチョウ並木が有名ですね。この並木のイチョウは、じつは御苑のイチョウが母樹になっているのはご存知でしょうか?
明治42年(1908)、新宿御苑で採取したギンナンを、現在の明治神宮内の苗圃で育て、そのなかから樹形に優れた木を選抜し、大正12年(1923)に神宮外苑のイチョウ並木に植えられました。
こうした歴史から、神宮外苑のイチョウ並木は、御苑のイチョウの木の子どもたちともいえますね。
現在、園内には、お母さんの木となったとされるイチョウをはじめ、各所に約140本のイチョウを植栽しています。
園路沿いなどには、ギンナンをつけない雄木がおもに植えられていますが、母と子の森や日本庭園外周林など、森や茂みには、雌木も植栽しています。
西休憩所近くの雌木の根元のまわりには、お母さんである巨樹の幹をぐるりと囲むように、ギンナンがびっしりと落ちていました。
その子どもたちのいくつかは、芽が伸びはじめているものも。
今から約110年前、新宿御苑より旅立ち、神宮外苑で芽吹いたのも、はじまりはこの小さな赤ちゃんイチョウたちだったのでしょう。
足もと一面に広がる、歴史を語る小さな命たち。お母さんの木に見守られながら、しずかに若葉を広げています。
新宿門横のインフォメーションセンターでは、木の実のなかから、人気の「ドングリ」にスポットを当てたテーマ展示も行っています。
新宿御苑にご来園の際は、ぜひインフォメーションセンターにもお立ち寄りください。
2016年10月19日 11:00