第5回 歴史的巨樹を巡る~ケヤキ編~

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 樹木が青葉を伸ばし、それぞれの持ち味を深めるこの季節。
 先日より「巨樹」をテーマに、ユリノキ、ハクモクレン、ラクウショウ、プラタナスと、新宿御苑の歴史的な巨樹をシリーズでご紹介してきました。
 第5回となる今回は、日本を代表する広葉樹のひとつ・ケヤキをご紹介します。
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(写真:イギリス風景式庭園の名木10選の大ケヤキ)
 
【新宿御苑の歴史的巨樹をめぐる 過去の記事はこちら】
 
 ケヤキ(Zelkova serrata)はニレ科の落葉高木。本州から九州にかけて広く自生しますが、街路樹や公園樹としてもよく植えられています。
 長寿の木としても知られ、日本各地に天然記念物に指定された古木があり、ケヤキは私たちにとって身近な木のひとつといえますね。
 
 新宿区が選定した「みどりの新宿30選」においても、新都心北通りや神楽坂通りのケヤキ並木、新宿駅東口広場とモア街のケヤキ、下落合二丁目の路傍樹(ケヤキ)など、ケヤキの木が多く選ばれています。
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 ケヤキは木目が美しく、材質も硬く強靭であることから、古来より建築材や家具や用具を作るための木材として利用されてきました。
 とくに和風建築の大黒柱や天井、床木のほか、和太鼓やちゃぶ台などの和家具に欠かせない木材となっています。
 寺社建築の木材としても用いられており、京都の清水寺の舞台をはじめ、映画「男はつらいよ」の寅さんの舞台となった柴又帝釈天は総ケヤキ造りとして知られています。
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(写真:レストハウス前のケヤキ)
 
 古くから日本人の暮らしに愛着を持って取り入れられてきたケヤキ。こうした人々との関わりから、際立ってすぐれている木であるという意味の「異(け)やけき木」から名前がついたといわれています。
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(写真:レストハウス前芝生のケヤキ)
 
 新宿御苑には、レストハウス前やイギリス風景式庭園など園内各所に約140本のケヤキが生育しています。
 一般的なケヤキというと、竹ぼうきをひっくり返したような樹形がおなじみですが、御苑のケヤキは多くが自然樹形のままのびのびと育っているのが特徴で、しばしば、お客さまから「ケヤキのイメージが変わりました」といった声を寄せていただきます。
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 なかでも、イギリス風景式庭園(場所ナンバーN3付近)のケヤキは、樹高17メートル、幹回り6メートルにもなる大木です。
 新宿御苑が皇室庭園となる明治時代よりもさらに昔、高遠藩主内藤家の下屋敷があった江戸時代に植栽された木といわれています。
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 昭和34年(1959)、新宿御苑の一般公開10周年を記念して『新宿御苑 名木10選』のひとつにも選ばれており、堂々したたたずまいに御苑の主を思わせる風格がただよいます。
(写真:名木10選のケヤキ下に、御苑の名木を紹介する看板があります)
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 幹に巻かれた包帯は、樹木治療のためのもの。老朽化して傷んだ巨樹の幹に土の中と同じような環境を作り、発根を促しています。
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 青々とした葉っぱのつけ根には、小指の先ほどの小さな木の実も見つけました。まだ未熟な青い実ですが、秋の紅葉シーズンをむかえる頃には、茶色く熟して、種子ができているでしょうか。
 園内の見上げるような巨樹たちも、その命はこの小さな種ひと粒から始まったのですね。
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 「この木はいったいどれくらいの時間ここにいるのかな?」「また会いに来るね」
 もの言わぬ樹木たちですが、ともに過ごすひと時を通して、より親しみが湧き、気持ちが通じ合ってゆくのが感じられますね。
 
 新宿御苑とともに歩み、時代を超えて受け継がれる歴史ある巨樹たちにぜひ会いに来てくださいね。

2016年8月18日 11:00

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