本日7月27日(水)、千葉大学名誉教授・農学博士の藤井英二郎氏を講師にお迎えし、環境省新宿御苑管理事務所の主催による歴史セミナー「新宿御苑の築庭時の姿を探る旅」が開催されました。
セミナーには、ヴェルサイユ国立高等造園学校生をはじめ、東京都公園協会文化財庭園課職員、新宿御苑の職員やボランティアなど25名が参加しました。
新宿御苑の庭園はどのようにして造られ、そして時代とともにどう変化してきたのか。
昔の図面を使った検証や、園内散策を通して、庭園の歴史について理解を深めました。
(写真:現存する巨樹の配置から庭園のデザインを探る)
(写真:桜園地より中の池方向へのビスタラインを望む)

新宿御苑の庭園誕生の歴史を語るうえで欠かせない人物が、新宿御苑の総指揮者・福羽逸人と、ヴェルサイユ園芸学校の造園教授アンリ・マルチネー(Henri Martine)です。
(写真:福羽逸人)
明治31年(1898)に新宿御苑の総責任者となった福羽逸人は、国内外からの賓客を招き、日本の文化や自然の魅力を紹介する皇室庭園創設への想いを強くします。
福羽は明治33年(1900)、パリ万博のためフランスを訪れた際に、ヴェルサイユ園芸学校の造園教授アンリ・マルチネーに新宿御苑を皇室庭園に改造する計画を依頼。
その後の明治34年から5カ年の改造工事が始まりました。
明治39年に皇室庭園「新宿御苑」が完成すると、明治天皇のご臨席のもと日露戦争祝賀会を兼ねた開苑式が行われました。

当時、マルチネーが描いた庭園完成予想鳥瞰図には、フランス式整形庭園の東側に位置する正門を入り、正面にルネサンス様式の2階建ての宮殿、その前庭には大噴水が描かれています。
宮殿の後ろ側には、のびのびとしたイギリス風景式庭園が広がり、美しい曲線を描く園路や、ゆったりした輪郭の池が特徴的です。
宮殿が建造されなかった点など、細部の修正はありますが、現代においてもほぼ設計図の様式が保たれていることが分かります。
(写真:マルチネーが描いた庭園完成予想鳥瞰図・部分)
残念ながら、当時の設計図は昭和20年(1945)の空襲で焼失してしまいましたが、インフォメーションセンターにて鳥瞰図の複製全体図をご覧いただけます。
(写真:インフォメーションセンター正面入り口より入ってすぐ上に展示された鳥瞰図)
(写真:マルチネーの鳥瞰図で苑路がデザインされていた場所を検証/名木十選の大ケヤキ付近)
(写真:かつて苑路があった名木十選の大ケヤキ~レストハウス付近を望む)
(写真:正門から入ってフランス式整形庭園の正面奥には、ルネサンス様式の宮殿が建造される予定でした)
時代をこえて愛され、歴史とともに歩みつづけてきた新宿御苑の庭園。
新宿御苑ではこれからもみなさまに愛される庭園を守り、未来につなげてゆく取り組みを進めてまいります。
【日仏文化交流事業について】
新宿御苑とフランス・ヴェルサイユとの交流事業は、東北復興支援と日仏両国の文化交流を目的として、平成24年3月10日よりスタートしました。
同年3月23日には、クリスチャン・マセ駐日フランス大使立会により、環境省自然環境局長とフランス・ヴェルサイユ宮殿美術館国有地公団総裁(カトリーヌ・ペガール氏)との間で正式に署名が行われ、知識と情報の交換、展示会の開催、庭園管理に関する技術的助言の提供など、相互協力を行うことが決定されました。
その後、平成26年11月にはヴェルサイユ宮殿で、明治33年(1900)のパリ万国博覧会以来となる菊の大作り展示が行われるなど、日本とフランスでさまざまな交流イベントやセミナーが行われました。
■平成24年3月10日~3月23日
■平成24年8月7日~9月2日
■平成24年11月11日
講師:アラン・バートン氏(ヴェルサイユ宮殿・ガーデナーチーフ)
■平成25年11月28日
講師:ピエール=アンドレ・ラブロード氏
(ヴェルサイユ国営地専属 歴史的記念物主任建築家)
水真洋子氏(ヴェルサイユ国立高等造園学校)
■平成26年11月1日~15日
2016年7月27日 17:00