新宿御苑ゆかりの「神戸オリーブ園」

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 徳川家康の家臣・内藤家の江戸屋敷をルーツとする新宿御苑ですが、明治5年には国内外の農園芸の研究を行う国営の農業機関「内藤新宿農事試験場」が開設され、様々な西洋野菜や果物、樹木や花卉などの栽培が行われました。
 また、分園として明治10年に港区の薩摩藩邸跡に「三田育種場」が、明治12年に兵庫県の神戸に「神戸阿利襪園(オリーブ園)」と翌13年に稲美町に「播州葡萄園」が開設され、オリーブ栽培と搾油、ブドウ栽培とワイン醸造が行われました。
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 今月2日、「神戸オリーブ園」の跡地である神戸北野ホテルにて、記念植樹と案内板のお披露目が行われました。日本最古のオリーブといわれる湊川神社の枝を接ぎ木した3本のオリーブ苗と、オリーブ園の歴史を紹介する案内板が、ホテルのエントランスに設置され、除幕式が行われました。
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 案内板には、園の創設にたずさわった、新宿御苑苑長でのちの大膳頭となる福羽逸人とパリ万博の事務官長をつとめた前田正名の写真が飾られました。福羽は晩年に記した『回顧録』の中で、このオリーブ園の創設や事業について詳しく記録しています。
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 100年後の今日にこのような日を迎えることはおそらく想像していなかったでしょう。驚いているかもしれませんが、優しく微笑む表情には、まるでエールを送っていただいているようにも感じます。 
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 兵庫県に創設されたこれらの分園は、その後明治20年代には民間へ払い下げられ、その短い活動の歴史も時代の変遷のなかで忘れ去られようとしていました。しかし、近年、神戸大学名誉教授の中西テツ先生を中心に再びその歴史が解明され、研究が始められました。また、地元団体「インターナショナルオリーブアカデミー神戸」とともに、地域復活の活動が進められています。
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 100年の歴史を経て新たな産声を上げた、神戸オリーブ園。北野地区は明治時代に建設された異人館が保存される瀟洒な一角ですが、各所に植栽されたオリーブの銀葉が彩りを添えています。これからさらに大きな枝葉を広げて、街の大きな魅力となることを願っています。

2015年6月18日 13:23

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