新宿門からフランス式整形庭園へまっすぐのびた見通し線(ビスタライン)の中央に、威風堂々と佇んでいる新宿御苑のシンボル・ツリーなど園内各所でユリノキの花がみごろをむかえました。
「大きな木に可愛らしい花が咲くんですね。」とお客様。
シンボルツリーは高さ約34メートルまで生長し、遠目には緑一色にも見えますが、木に近づいて見上げると黄緑色にオレンジ色がアクセントを添える可愛らしい花が木いっぱいに咲いています。
ユリノキという名前は、花の形をユリの花にたとえたことに由来します。また、チューリップに似た花形から、英名ではチューリップツリーと呼ばれています。
「木の上から、花が降ってきたのよ。こんな近くで花を見れてラッキーだったわ。」
ユリノキに近づいて気付かれた方も多いと思いますが、木の足元にたくさんの花が落ちています。「みごろ過ぎなのかしら?」と思われる方もいらっしゃいますが、これは自然に落花したものでは無く、カラスが甘い蜜を狙ってつつき落としてしまったものです。拾い上げてみると、アリが蜜をお楽しみ中でした。間近で見ることが難しいユリノキの花を手元で観察できるのは、嬉しいですがユリノキにとってはちょっと困りものです。
園内のユリノキは、明治20~30年代に日本で初めて新宿御苑に植えられたといわれています。明治40年には、街路樹育成用に園内のユリノキの種子が東京に払い下げられ、赤坂迎賓館から外堀通りの紀伊国坂をはじめ、現在東京都内の街路樹のユリノキは、御苑のユリノキが母樹であるといえます。
(イギリス風景式庭園:丸花壇近くのユリノキ)
千駄ヶ谷門近くでは、ユリノキの仲間のシナユリノキもみごろとなっています。花びらの色がユリノキと比べると濃緑色で、少し小ぶりとなっています。原産地の中国では、標高1000~1500mに分布していますが、生育地の開発などにより数を減らし、現在は世界的に絶滅が危惧されている準絶滅危惧植物に指定されています。
5月の大型連休最終日の本日も雲ひとつない晴天になり、新宿御苑でゆっくりと過ごそうとご家族連れの方やカップルの方が多くご来園しています。連休に入ってから連日、じりじりと夏のように暑い日が続いていましたが、今日は暑さも和らぎ散策日和となりました。
2015年5月 6日 12:37