庭園を守るお仕事通信9月号【温室班】
江戸時代の日本では、庶民の庭先に現代の温室にあたる「室(むろ)」を備えて植物を育てていたそうです。当時の西欧では温室で植物を育てるのは貴族の趣味の範囲であったため、西欧人は驚いたそうです。
スコットランド出身の植物学者のロバート・フォーチュンの「花を愛する国民性が、人間の文化的レベルの高さを証明するものであるとすれば、日本の庶民はわが国より、ずっと勝っているとみえる。」と有名な言葉が残っています。
温室はその国の文化のある意味バロメーターとも言えるかもしれませんね。
今月は温室の植物管理を支える、温室班スタッフの一日の仕事をご紹介します。
開園前の時間、観賞温室チームとバックヤードチームの2班にわかれて作業開始!
こちらは観賞温室チーム。
9時半のオープンに向けて、作業を進めます。まずは、植物や土の乾きの状態を確認しながら水やりをします。
温室を鑑賞された方で「なぜ、葉まで濡れてるの?」と疑問を持たれた方も多いかと思います。植物は土だけでなく、葉からも水を吸収するため葉水を行っています。また、水の吸収以外にも葉水には大切な役割があります。
1つ目は、埃対策。
葉に埃が積もると光合成を妨げる恐れがあるので、葉に水をかけることで表面などの埃が洗い流され、健康で美しい葉を保つことが出来ます。
2つ目は、虫や病気対策。
ハダニなどの虫は気温が高く、乾燥しているところを好むため、葉水をすることにより潤いを保ち、虫や病気を防ぐ効果があります。
9月も半ばになりましたが真夏日の日もあり、開館前と閉館後の2回水やりを行っています。ヘゴはてっぺんに生長点があるため、乾かないように天候によって開館中に水をあげることもあります。水やりしているスタッフの姿をご覧になられた方も多いのではないでしょうか?
水やりの後は、安全確認と共に通路に落ちた葉を掃除を行い、皆様を迎える準備を進めます。
こちらはバックヤードチーム。
温室の裏手側には、11棟の栽培棟が建ち並び、植物はおよそ2700種8500鉢を栽培しています。1棟ずつ植物の特徴に合わせて、室温や湿度を変えて管理されています。
その中でも栽培数が多いのが洋ランです。一鉢づつ手で、鉢の乾き具合を見ながら加減して水やりをします。虫による食害や病気など、異変をいち早く気づくこともできます。また、温度変化の激しい今の時期はこまめに、遮光カーテンや窓の開閉で環境を調節します。
新宿御苑は洋ラン発祥の地であり、戦火を逃れ守り抜かれた洋ランが、現在でもスタッフたちにより大切に育てられています。
水やりが終わったら、バックヤードの栽培管理棟で、植物の植替えや用具の手入れ、企画展示の展示の準備などを行っています。
毎日11:00と13:00には、館内放送で、スタッフがその日見てほしい植物をピックアップしてご紹介していますので、お楽しみ下さい。
365日、植物と向き合い少しの変化も見逃さぬよう管理を行っている温室スタッフの一日はいかがだったでしょうか?
ご来園の際には、是非温室にお立ち寄りくださいね。