庭園を守るお仕事通信2月号【菊班】
いつも新宿御苑にご来園いただきまして、誠にありがとうございます。
新型コロナウイルス感染症の更なる感染拡大防止のため、緊急事態宣言の発令に伴い、令和2年12月26日(土)より臨時閉園しております。
園内の自然情報の発信については、冬の新宿御苑の庭園風景をインターネットを通してご鑑賞いただきたく、引き続き情報発信を行います。
スタッフ一同、みなさまにご来園いただける日まで、庭園や植物の栽培管理をしっかり行ってまいります。何卒ご理解とご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。
本日は庭園管理業務のひとつ「菊栽培」にスポットをあて、菊班の2月の作業から「植え替え」をピックアップしてご紹介します。
毎年11月1日~15日に開催する秋の伝統行事の「菊花壇展」は、回遊式の日本庭園内に上家(うわや)といわれる建物を設け、特色あふれる花々を独自の様式を基調に飾り付けた、皇室の伝統を受け継ぐものです。
菊花壇展で使用されている菊は、新宿御苑内の菊栽培所で育てています。
菊栽培所では、年間を通して、菊花壇展に向けて品種交配や各花壇に使用する菊の生育など様々な準備を行っています。
今回は、懸崖菊花壇で展示する苗の植え替えを行いました。
懸崖菊とは、野菊が断崖の岩間から垂れ下がって咲いている姿を模して、1本の小菊を大きな株に仕立てる技法です。花壇には、大小2つの大きさに仕立てられた菊が展示されますが、今回は小さい鉢の植替え作業です。
1月に親木から出た一番成長の良い新芽の根を傷めないように解しながら取り、鉢に植えて生長させた苗を鉢から抜きとり、カビや雑菌を防ぐ土壌改良剤を土の回りにかけます。
その後、一回り大きい鉢に植え替えます。土が根の間などにきちんと入るように丁寧に手作業で行います。植物が鉢の中で根が張りすぎると、窮屈になり、根も葉も生長しなくなってしまいます。植え替え作業は、菊の生育にたいへん重要な工程です。
植え替えたものは数回に分けて水やりを行います。分けて与えることによって、土にできた隙間が埋まり、鉢全体に水が浸透していきます。
このように、生長する度に、植え替えを繰り返していきます。
明治から続く観菊会の菊の栽培は、今もその伝統と技術を守り、受け継がれています。
赤坂御所で行われていた観菊会は、昭和4年(1929)から、新宿御苑で開催されることになり、菊花壇展として、今日に至っています。
私たち国民公園協会は、これからも古典菊の品種の保全、栽培管理に取り組んでまいります。