新宿御苑の伝統行事 菊花壇展を支えるスタッフ
8月7日の立秋を過ぎ、暦の上では秋をむかえましたが、今年は連日、厳しい暑さが続きますね。
秋になると日本各地で菊のお祭りや展示会が行われますが、新宿御苑でも毎年11月1日から15日まで菊花壇展を開催しています。
新宿御苑の菊花壇展は、日本庭園内に上家(うわや)とよばれる建物を設け、特色あふれる菊の花々を、皇室ゆかりの独自の様式を基調に飾り付けます。
(写真:大菊花壇)
菊の栽培所では、今年の開催に向けて担当スタッフによる準備が進んでいます。
本日は「懸崖作り」に使う菊の「伏せ込み」という作業をご紹介します。
懸崖作りとは、1本の小菊を大きな株に仕立て、野菊が断崖の岩間から垂れ下がっている姿を表現する技法のこと。
日毎にぐんぐん伸びる花枝を舟形の土台に這わせながら、美しい懸崖の形に整えてゆきます。
(写真:懸崖作り花壇)
ただし、植物の伸びたいままに放っておくと、光のよく当たる上側ばかり育ち、菊花壇展本番で花数や花の咲くタイミングが揃いません。
「伏せ込み」は、下から伸びてくる枝もまんべんなく生長できるよう、上に伸びた枝を横に寝かせる作業です。
この時、伸びた枝を途中でつみ取ることで、その周りには新芽が出てきます。新芽が生長したら、再び伏せ込みを行います。この作業を何度も繰り返して、花数を増やします。
新宿御苑の菊花壇展は皇室ゆかりの技術を受け継ぐ伝統行事です。
その歴史は古く、明治11(1878)年に宮内省が皇室を中心として菊を鑑賞するため、赤坂の仮皇居で開催された「菊花拝観」がルーツとなっています。明治37年からは新宿御苑で菊の栽培が始まり、昭和4年(1929)からは鑑菊会も御苑で開催されるようになりました。
その後、昭和24(1949)年に新宿御苑が一般公開され、宮内省時代より受け継いだ伝統ある菊花壇展もはじめて一般に公開されました。
以来、新宿御苑の秋を彩る代表的な行事のひとつとして親しまれています。
(写真:大作り花壇)