新宿高校公開講座「親子で挑戦!『内藤とうがらし』復活プロジェクト」を開催しました
8月26日(日)に都立新宿高校の公開講座「親子で挑戦!『内藤とうがらし』復活プロジェクト」が開催されました。
江戸時代に新宿で流行したものの、その後の都市化によって絶滅した新宿ゆかりの江戸東京野菜「内藤とうがらし」の栽培や学習活動を通じて、歴史や文化、調理法等を親子で一緒に学びます。
都立学校公開講座は、都民の生涯学習の幅広いニーズに応えるとともに、開かれた学校の実現を目指して、都立学校の教育機能を開放し、講座として学習機会を提供することを目的に、東京都が主催する生涯学習活動の取り組みです。
今日は全5回からなる講座の最終回で、内藤とうがらし誕生の地である新宿御苑を舞台に、内藤とうがらしと新宿御苑の歴史や栽培方法などについて学びます。講座には小学1年生から6年生のお子さまと保護者の方およそ20名が参加しました。
(写真:内藤とうがらし)
講座では、国民公園協会新宿御苑 広報企画担当の本荘暁子が講師となり、新宿御苑のみどころや歴史をご紹介するガイドツアーを行いました。今日の東京は最高気温35℃を超える猛暑日となったため、なるべく木陰を通りながら園内を散策しました。
一行はまず大木戸休憩所に向かいました。
新宿御苑のはじまりは今から400年以上も前の江戸時代のこと。天正18年(1590)に豊臣秀吉から関八州を与えられた徳川家康が江戸城に入城した際、譜代の家臣であった内藤清成に授けた江戸屋敷がルーツといわれています。
ここ大木戸休憩所にはかつて内藤家の御殿が建てられ、池、谷、築山をしつらえた景勝地「玉川園」が造られました。内藤家の屋敷地は御殿と庭園を除きほとんどが畑として農民に貸し出されており、内藤とうがらしや内藤かぼちゃなどの作物が栽培されていました。
大木戸休憩所売店をはじめ園内6か所の売店では、内藤とうがらしを取り入れたお菓子やお土産品など、御苑の歴史にちなんださまざまなオリジナルグッズをご紹介しています。
続いて、大温室に向いました。
江戸からさらに時代は進み、今からちょうど150年前に明治時代をむかえます。
明治5年(1872)に新宿御苑は、近代農業の技術改良と試験栽培を総合的に行う「内藤新宿試験場」となります。西欧から近代農業技術を取り入れ、外国産の野菜や果物、樹木、花卉の収集・栽培や、養蚕、牧畜、養蜂、製茶など近代農業の研究が幅広く行われました。
今では身近な食材であるキャベツやトマト、たまねぎ、レタスといった野菜や、イチゴやリンゴ、ブドウなどの果物が御苑で試験栽培されたのち全国へ広まりました。その後、加温式の温室が建てられると、近代的な促成栽培が進められ、メロンやパイナップルなどの温室植物の収集と研究も盛んに行われました。
明治12年(1879)に内藤新宿試験場は「新宿植物御苑」に改称し、皇室の御料地・農園として運営されました。その後の明治39年には皇室庭園が完成しますが、このとき中心的な役割を担っていたのが、近代園芸の祖といわれる福羽逸人です。
福羽逸人は安政3年(1856)に石見国(現在の島根県津和野)に生まれ、明治5年(1872)、16歳の時に内藤新宿試験場の実習生となりました。その後、明治11年からの農事修学場の勤務を経て、明治31年には新宿御苑の総責任者となりました。
(写真:大温室の福羽逸人の解説パネル前にて)
福羽が御苑で手がけた代表的な事業のひとつが、日本初の国産イチゴの作出です。明治31年(1898)、福羽はフランスの「ゼネラル・シャンジー」というイチゴ品種から国産イチゴ第一号となる「福羽苺」を作出しました。当時の新宿御苑は皇室の御料地だったことから「御料イチゴ」とも呼ばれていましたが、大正時代に高級品種として全国に栽培が広まってゆきました。「とちおとめ」や「あまおう」など、いま日本で食べられている多くのイチゴも、そのルーツをたどってゆくと福羽イチゴにつながります。
(写真:現在インフォメーションセンターで福羽苺の鉢を展示しています)
散策の道中で「大きいですねぇ」と参加者の方が驚かれたのが、新宿御苑のシンボルツリーとしても親しまれるユリノキ。樹高はおよぼ40メートルにもなります。
こちらのユリノキをはじめ、プラタナスやタイサンボク、ラクウショウ、ヒマラヤシーダーなど園内各所にある外国産の樹種は、その多くが明治の試験場時代に植えられたもので、樹齢は130年以上と考えられています。見上げるほどの巨樹に育った姿は、新宿御苑が歩んできた長い歴史を私たちに語りかけてくれますね。
(写真:旧洋館御休所近くのユリノキ)
散策の最後に、園内で内藤とうがらしを栽培している三角花壇へ向かいました。6月に苗を植えてからおよそ3か月。はじめは若葉をピンと伸ばした小さな苗からのスタートでしたが、ご来園のみなさまからのあたたかな応援もいただき、すくすくと生長しました。
現在は青々とした“葉とうがらし”をめいっぱい広げ、緑色から黄色、オレンジ、赤色の色とりどりの“とうがらしの実”をたくさん付けています。
参加者の方はご家庭で内藤とうがらしを栽培していらっしゃる方も多く、栽培のコツなどを熱心に質問していらっしゃいました。
最後はインフォメーションセンター館内のカフェはなのきに移動し、新宿御苑オリジナルの内藤とうがらしとイチゴのソース添えアイスクリームを召し上がっていただきました。とても暑い一日でしたので、ひんやり冷たいデザートでクールダウンにもなったのではないでしょうか。
まとめのお話で、内藤とうがらしプロジェクト代表の成田重行さんから、内藤とうがらしの育て方のコツや、暮らしに上手に取り入れるポイントなどをご紹介いただきました。
内藤とうがらしは見て育てる楽しさや食材としての利用はもちろんですが、食用以外にもさまざまな活用方法があります。たとえば、とうがらしをお風呂に入れて温浴することで身体の血流を良くして、冷え性や肩こりに効能があることが分かっています。
新宿の歴史とともに生まれた内藤とうがらし。新宿では学習教材としても活用されており、新宿区の学校では子どもたちが「自分たちで育て、種を採り、育てた野菜を料理する」命の学習活動を通して、自分達の地域の歴史や文化を学んでいます。
>>2017新宿内藤とうがらしサミット開催について詳しくはこちら
9月8日(土)、9日(日)の都立新宿高等学校の朝陽祭(文化祭)では、内藤とうがらし栽培研究の成果発表やオリジナル商品の紹介を行うほか、劇や演奏の発表、文化系のクラブの展示、食品販売の模擬店やバザーなど、さまざまな催しが行われます。
参加者のみなさま、本日はありがとうございました。
新宿御苑では日頃より、新宿御苑内の飲食施設「レストランゆりのき」と「カフェはなのき」で、新宿ゆかりの内藤とうがらしのほか、都内の農家直送の新鮮な江戸東京野菜を使った地産地消メニューの提供や、環境にやさしいエコ・クッキングの取り組みを進めております。
新宿御苑にご来園の際には、ぜひ東京・新宿ならではの味わいをお楽しみください。
【営業案内】
■利用時間/9:00~16:00(ラストオーダー)
■定休日/新宿御苑休園日
カフェはなのき、レストランゆりのきは、とうきょう特産食材使用店へ登録されています。