冬でもポカポカ大温室♪新宿御苑の歴史に親しもう
一年でもっとも寒いとされる「大寒」とあって、先日から厳しい冷え込みが続きます。
寒い冬におすすめのスポットが、平成24年(2012)11月にリニューアルオープンした大温室です。開館当初はまだ小さかった植物も、5年が経ち、すくすく伸びやかに生長しています。
凍えるような季節でも、温室に一歩入れば別世界。世界各地の熱帯植物や、新宿御苑の歴史的な植物である洋らんをお楽しみいただけます。
(写真:洋らん)
温室内にはジャングルや池沼、山地、乾燥地のほか、日本国内における亜熱帯地域である小笠原諸島や南西諸島といった環境テーマごとに、特色あふれるさまざまな植物をご覧いただけます。
■人と熱帯の植物エリア
人の身近にあり、親しまれている熱帯の花木や果実のなる植物を中心に展示しています。
一年中、水温が高い熱帯池沼に自生する水生植物を展示しています。
■熱帯低地の植物エリア
ジャングルや熱帯季節林、サバンナに自生するさまざまな植物を展示しています。
とりわけ、いま一番のおすすめが洋らんです。温室内に設けた展示台に、おなじみカトレアやシンビジウムなど、みごろをむかえた洋らんを展示しています。
※展示する鉢は植物の健康状態に応じて入れ替えを行っています※
さて、新宿御苑が日本の本格的な洋らん栽培の発祥の地といわれているのはご存知でしょうか?
新宿御苑における温室と洋らん栽培の歴史は古く、そのはじまりは御苑が農事試験場だった明治時代にまでさかのぼります。
明治5年(1872)、徳川家康の家臣・内藤家の江戸屋敷をルーツとする新宿御苑の地に、国内外の農園芸の研究を行う「内藤新宿試験場」が開設され、さまざまな西洋野菜や果物、樹木や花卉などの栽培が行われました。
明治8年(1875)に無加温の温室が完成した後、明治12年(1879)には宮内省所管の「新宿植物御苑」となり、宮中晩さん会などの皇室行事で用いられる野菜や果物のほか、洋ランをはじめとする装飾花の育種、栽培を行う御料農場としての役割を担いました。
(写真:戦前の旧温室※昭和初期撮影に横から撮影)
その後、明治25年(1892)に加温式の洋風温室が建築されると、近代的な促成栽培がよりいっそう進められました。大正から昭和のはじめにかけては、特に洋ランの交配に力を入れ、カトレヤ・シンジュクなど、新宿の名を冠した独自品種を多数作出しました。
(写真:旧一号温室内部)
温室正面入口から入ってすぐのところでは当時、御苑で交配育成された品種のひとつ「レリア シンジュク(旧ションボレリア シンジュク)」を展示しています。
(写真:レリア シンジュク/旧ションボレリア シンジュク)
※展示する鉢は植物の健康状態に応じて、定期的に入れ替えを行っています※
温室正面入口(新宿門側)の北側には、新しい大温室建設の際に出土した明治期の温室の遺構の一部をご覧いただけます。
(写真:明治期の温室の遺構の一部)
現在、新宿御苑の大温室は環境省が所管する環境配慮型温室として、熱帯植物およそ2,700種を栽培、展示するほか、絶滅のおそれのある植物の保護増殖を行っています。
洋ランにおいては戦前の古い品種や御苑で作出された独自品種、原種の野生ランの保護栽培に取り組んでいます。
(写真:洋らん)
ご来園の際はぜひ新宿御苑の歴史の魅力がいっぱい詰まった大温室にご来場ください。