新宿御苑の歴史を伝える洋ランの花々

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 今日の東京は気温10℃を越え、冷え込みのやわらいだ週末となりました。寒い冬のおすすめスポットが、大木戸門より徒歩1分のところにある「大温室」です。ぽかぽか暖かな館内で、一年通して熱帯の国の花々やトロピカルフルーツなどが楽しめます。
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 とくに今一番のみどころが洋ランです。館内各所の展示スペースに、みごろをむかえた艶やかな洋ランを展示しています。
※展示する鉢は植物の健康状態に応じて、定期的に入れ替えを行っています※
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 新宿御苑の洋ランの歴史は明治時代にさかのぼります。明治の頃より温室では園芸種だけでなく原種の収集が盛んに行われましたが、昭和のはじめには洋ランの品種改良を行い、数多くのオリジナル品種を作り出しました。現在も「シンジュク」や「フクバ」という名前のついている品種がありますが、これらはすべて新宿御苑で作られたオリジナルの品種です。
 
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 温室の正面入り口を入ってすぐのところでは「レリア シンジュク(Laelia Shinjuku(旧Schombolaelia Shinjuku)」の鉢も特別に展示しています。このランは新宿御苑が洋ラン栽培に力を入れていた昭和9年(1934)に、「レリア ウンドゥラタ」に「レリア スピルビエンシス」を交配育成して作出されました。
(写真:レリア シンジュク)
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 年明けから3月頃は洋ランの旬の時期にあたり、全国各地でさまざまな洋ランの展示会が開催されますね。新宿御苑ではこうした催しに先駆けて、前年の11月下旬から12月に「新宿御苑洋らん展」を行っており、昨年は11月28日より12月3日まで『第29回「新宿御苑洋らん展」』を開催しました。
(写真:レリア シンジュク)
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 新宿御苑の温室と洋ラン栽培にまつわる歴史は、明治8年(1875)に建てられた約100平方メートルの温室に始まります。この頃の新宿御苑は「内藤新宿試験場」とよばれる内務省所管の農業試験場で、さまざまな西洋野菜や果物、樹木や花卉などの栽培が行われました。
 
 明治8年(1875)に無加温の温室が完成した後、明治12年(1879)には所管を宮内省に移し「新宿植物御苑」と名称を変更して皇室苑地として運営されました。宮中晩餐会などの皇室行事で用いられる野菜や果物のほか、洋ランをはじめとする装飾花の育種、栽培を行う御料農場としての役割を担いました。
(写真:戦前の旧温室※昭和初期撮影に横から撮影)
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 日本で初めて洋ランが栽培されたのは、明治16年(1883)に福羽逸人が私邸に設けた小さな温室でした。ここではフランスから取り寄せたシンビジューム、オンシジュームなどの栽培が試みられていました。
(写真:福羽逸人)
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 明治25年(1892)に新宿御苑に加温式の洋風温室が建てられると、メロンやパイナップルといった温室植物の収集と研究がよりいっそう盛んに行われるようになり、近代的な促成栽培が進められました。
 また、福羽逸人は、私邸で栽培を続けていたランなども御苑の温室に移します。ラン栽培の洋書を手に入れ、本格的な洋ラン栽培の研究も始まりました。
(写真:旧一号温室内部)
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 大正から昭和のはじめにかけては、特に洋ランの交配に力を入れました。レリア シンジュクやスタンホペア シンジュク、セロジネ シンジュク、パフィオペディルム シンジュク#144など、新宿の名を冠した独自品種も、この頃に多数作出しました。
(写真:スタンホペア シンジュク)
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(写真:パフィオペディルム シンジュク#144)
 
 しかし、昭和20年(1945)の第二次世界大戦の空襲により、園内はほぼ全焼という大きな被害を受け、温室も植物と建物の大部分が失われてしまいます。わずかに残った洋ランなど貴重な植物は、園内で集めた薪を燃やした熱を使って越冬させることで、なんとか守ることができたと伝えられています。
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 戦後の昭和24年(1949)に、新宿御苑が厚生省所管の国民公園として一般公開されると、温室も御料農場から役割を変えて新たなスタートを切ることになりました。
 昭和26年(1951)から温室の公開が始まりましたが、観賞用には建てられていなかった為、改修工事が行われました。そして昭和33年(1958)に、当時としては東洋一の規模を誇るドーム型の大温室が完成・公開され、日本における観賞温室の先駆けとなりました。
(写真:昭和33年完成当時の大温室ヤシ室)
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 その後、平成21年(2009)に施設の老朽化のため建て替え工事が行われ、平成24年11月に現在の大温室へと生まれ変わりました。
 
 現在、新宿御苑の大温室は環境省が所管する環境配慮型温室として、熱帯植物およそ2,700種を栽培、展示するほか、絶滅のおそれのある植物の保護増殖を行っています。洋ランにおいては戦前の古い品種や御苑で作出された独自品種、原種の野生ランの保護栽培に取り組んでいます。
(写真:現在の大温室)
 
【大温室の開館時間】
 9:30~15:30(15:30入館終了、16:00閉館)
 
【大温室の一部エリアの立ち入り制限につきまして】
 大温室の天窓ガラスに不具合が発生したため、館内の一部エリアの立入禁止を行っており、通行いただけない区域があります。
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 また、エコハウス展示室(レストランゆりのき内)では、特別企画「『大饗紀事』よりひもとく大膳頭・福羽逸人と大正天皇即位礼饗宴」を開催しております。
 
 会場では、福羽逸人が大正4年に記した『大饗紀事』から行事に関する史実を解明するともに、皇室御料地である新宿御苑における宮中とのつながりや、部下であった天皇の料理番・秋山徳蔵のエピソードなどをご紹介しております。
(写真:エコハウス展示室)
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 福羽の手掛けた宮中晩餐会では、新宿御苑で栽培した西洋野菜や果物が供されたほか、洋ランなどの花卉が会場を彩る装飾花として用いられました。
(写真:福羽逸人『回顧録』より洋ラン図説)
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(写真:新宿御苑で今も栽培している洋ラン)
 
新宿御苑にご来園の際は、ぜひ大温室とエコハウスにもお立ち寄りください。
 
■新宿御苑特別企画「『大饗紀事』よりひもとく大膳頭・福羽逸人と大正天皇即位礼饗宴」
日時:平成29年11月28日(火)~平成30年2月末頃(予定)
   9:00~16:30
会場:エコハウス展示室(レストランゆりのき内)

2018年2月11日 12:00

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