2016年 第3回「はじめての江戸東京野菜講座」を開催しました

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 昨日10月15日(土)、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会と国民公園協会新宿御苑の主催により「はじめての江戸東京野菜講座~江戸東京野菜には物語があります~」を開催しました。
 江戸東京野菜ともかかわりの深い新宿御苑を会場に、江戸東京野菜をめぐるさまざまな動きをお伝えする講座です。
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 本講座開始前に希望者を対象に、国民公園協会の本荘が新宿御苑の四季折々の自然のみどころや歴史をご紹介するガイドツアーを開催しました。
 雲ひとつない青空が広がる、さわやかな秋晴れの行楽日和。十月桜や子福桜、冬桜といった秋咲きの桜やバラなど、秋の花が咲き誇る園内を散策しながら、御苑の庭園のみどころや歴史スポットを巡ります。
 (写真:サービスセンター近くの十月桜)
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 新宿御苑のはじまりは今から400年以上も前の江戸時代。天正18年(1590)に豊臣秀吉から関八州を与えられた徳川家康が江戸城に入城した際、譜代の家臣であった内藤清成に授けた江戸屋敷がルーツといわれています。
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 大木戸門より入園してすぐのところにあるのが「玉藻池」を中心とする日本庭園です。安永元年(1772)に玉川上水の余水を利用して完成した内藤家の庭園『玉川園』の一部で、御苑のルーツといえる場所です。
 当時、玉川園など一部を除いて、敷地のほとんどが小作に出されており、江戸東京野菜の内藤とうがらし、内藤かぼちゃが栽培されていました。
 
 明治5年(1872)には、近代農業の技術改良と試験栽培を総合的に行う内藤新宿試験場となり、西欧から近代農業技術を取り入れ、外国産の野菜や果物、樹木、花卉の収集・栽培や、養蚕、牧畜など近代農業の研究が幅広く行われました。
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 その後、宮内庁所管の新宿植物御苑となり、明治39年には日本初の皇室庭園である新宿御苑が誕生しました。
 イギリス風景式庭園にある旧洋館御休所は天皇や皇族の休憩所として明治29年(1896)に創建され、大正時代後半からはクラブハウスとして使用されました。
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 旧洋館御休所のとなりには、平成24年11月にリニューアルオープンした大温室があります。
 新宿植物御苑時代の温室では、宮中の御料野菜や果物、花きの栽培が行われていました。
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 新宿御苑の庭園が誕生したのは、今からちょうど110年前の明治39年(1906)のこと。
 新宿御苑の総指揮者だった福羽逸人は、明治33年(1900)のパリの万国博覧会で、ヴェルサイユ園芸学校の造園教授アンリ・マルチネー(Henri Martine、1867~1936)に御苑を庭園に改造する計画を依頼しました。
 その後、5ヵ年の改装計画事業を経て、明治39年に庭園が完成しました。
(写真:フランス式整形庭園)
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 秋のバラが咲くフランス式整形庭園を背にして、イギリス風景式庭園を眺めると、御苑の庭園の南東から北西まで一直線に見通すことができます。これはビスタライン(見通し線)といって、庭園の奥行きをより深く見せる工夫です。
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 ビスタラインの中央に堂々とたたずむのが、新宿御苑のシンボルツリーともなっている、高さ30メートルを超えるユリノキです。
 遠目には1本の巨樹のように見えますが、じつは3本のユリノキがひとつの樹形を作るように育っています。
 
 ユリノキをはじめ、プラタナスやタイサンボク、ラクウショウ、ヒマラヤシーダーなど、園内各所にある外国産樹種は、その多くが明治の内藤新宿試験場時代に植えられたものです。樹齢は120年以上にもなり、その堂々とたたずむ姿からは、新宿御苑が歩んできた長い歴史が感じられますね。
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 午後からの本講座では、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会会長の大竹道茂氏より、「江戸東京野菜には物語がある」をテーマに講演が行われました。
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 江戸東京野菜とは、名前のとおり、江戸(東京)の地で生まれ、はぐくまれた野菜です。
 
 江戸東京野菜には、
 ①季節限定で旬があること
 ②自家受粉で種を採ることができる固定種であること
 ③江戸から昭和の各時代に江戸(東京)で暮らす人々の食生活を支え、食文化をはぐくんだ野菜であること
 という、3つの特徴があります。
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 江戸東京野菜は、平成28年10月現在でさまざまな種類の野菜が合計42品目登録されていますが、なかでも、もっとも登録種数が多い野菜がダイコンです。
 練馬ダイコン、亀戸ダイコン、伝統大蔵ダイコン、高倉ダイコン、東光寺ダイコン、志村みの早生ダイコン、汐入ダイコン(二年子ダイコン・時無しダイコン)の7種類が登録されており、どのダイコンにも地域の歴史と結びついた物語があります。
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 たとえば練馬ダイコンは、五代将軍の徳川綱吉が“江戸患い(えどわずらい)”と呼ばれる謎の病に倒れたことがきっかけで生まれた伝統野菜です。
 病気を患った綱吉は、下練馬で養生した際、尾張から大根の種を取り寄せて、百姓に栽培させました。大根は関東の土壌、気候風土によく合い、最大1メートルにもなるほどよく育ったそうです。
 野菜中心の食生活が功を奏し、2年ほどで綱吉の病は癒えました。
 その後、質の良い大根を献上させるようになったそうです。
 
 このときの綱吉の病とは、ビタミンB1不足による脚気だったとされています。
 江戸幕府が置かれ日本の中心部となった江戸の町は、やがて人口100万人の世界有数の大都市へと発展を遂げ、たくさんの食料を必要としました。
 江戸の中頃に、精米された白米を食べる習慣が広まると、町民は美味しい白米ばかりを食べるようになり、白米どんぶりいっぱいに、たくあん数切れという食事が主流になってしまったそうです。
 すると、栄養のかたよりによるビタミン不足から、人々の間で脚気が大流行しました。
 地方に暮らす人々も、参勤交代によって江戸の町で生活をすると江戸患いにかかることから、当時は江戸の風土病と考えられていたそうです。
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 人々の健康を守るため、江戸幕府が積極的に野菜を食べるよう推奨すると、大名は参勤交代の際に、ふるさとの野菜の種と農民を江戸へ連れてきて栽培を行いました。これにより全国各地の野菜の種が東京に集まり、江戸東京野菜の発展へとつながってゆきました。
 
 また、評判のよい野菜の種は江戸土産としての人気も高く、タネ屋街道と呼ばれた旧中山道を拠点に、日本中へと広まってゆきました。
 長野の前坂だいこん、鹿児島の山川だいこんなど、練馬大根系の大根が、現在も日本各地に伝わっています。
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 今でこそ、大根といえば「青首だいこん」が主流となっていますが、かつての江戸においては「白首だいこん」こそが主流だったそうです。
 とりわけ、亀戸ダイコンは根っこのみならず、葉っぱの茎までも白いのが特徴です。
 この特徴は、江戸時代にとある農家が育てた大根に、突然変異で出たものといわれています。この茎まで真っ白な大根を市場へ出したところ、市場人は一目見て「粋な大根だねぇ」と、3倍の値段を付けたそうです。
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 亀戸ダイコンの生まれた地、亀戸の香取神社では、毎年3月第一日曜日に行われる福分けまつりで、奉納された亀戸ダイコンが地域の人達へ配られています。地域の人達は、神社でもらったダイコンを大切に食べて、一年の無病息災を祈ります。
 この行事はくらしに溶け込み、十数年も続いており、かつては子供だった人が、今では親となり、子どもに伝えるなど、地域のなかで受け継がれています。
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 江戸東京野菜は地域の歴史とともに生まれた食材であることから、ただ「食べる」だけでなく、食文化にふれる「食育教材」としても注目されています。
 新宿では、地域の学校の子どもたちが中心となって、内藤とうがらし、内藤かぼちゃ、早稲田みょうが、鳴子うりなど、地域の伝統野菜を学習活動に活用しています。
 自分たちで野菜を栽培し、種を採り(自家採種する)、食べる活動を通して、子どもたちは命のつながりや、地域の歴史を学んでいます。
 
 東京の都市化にともない、いったんは姿を消した伝統の江戸東京野菜。
 しかし、平成元年(1989)の江戸東京野菜のタネを残す活動のはじまりをきっかけに取り組みが広まり、徐々に復活を果たしてゆきました。
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 現在は、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、海外に向けて東京の食文化を発信する機運も高まっており、東京が誇る伝統的なおもてなし食材としてのPRが積極的に行われています。
(写真:2016新宿内藤とうがらしフェアの様子)
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 続いてレストランへ移動し、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会理事で野菜ソムリエの上原恭子氏より「食材としての江戸東京野菜」をテーマに、メニューの紹介と試食会が行われました。
 今回ご紹介するのは旬の「内藤カボチャ」と「滝野川ゴボウ」です。
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 まずは、素材の味を知るために、滝野川ゴボウの根元と根先の食べ比べと、焼いただけの内藤かぼちゃを味わい、続いて、たたきゴボウのからあげ、滝野川ゴボウご飯、内藤かぼちゃの細切り炒めの3品を試食しました。
 滝野川ゴボウの食べ比べでは、部屋いっぱいにただようゴボウの香りに、参加者の方から「すごくいい香り!」と歓声があがりました。
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 最後に、レストランゆりのきの伊藤シェフより挨拶があり、「新宿御苑のレストランでは、大切に野菜を育てている生産者の方の気持ちが、食べる方に伝わるようなメニュー作りを心がけています」と話しました。
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(写真:レストランでの食事の付け合わせに登場する、内藤かぼちゃのピクルス)
 
 新宿御苑では日ごろより、レストランゆりのき、カフェはなのきにて、江戸東京野菜や東京産食材を使用した地産地消メニューをご紹介しております。
 ご来園の際には、ぜひ東京ならではの味わいをお楽しみください。
 
 

2016年10月16日 09:00

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