「江戸東京野菜のエキスパートが語る"夏野菜"講座」を開催しました

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 昨日7月16日(土)、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会と国民公園協会新宿御苑の主催により、「江戸東京野菜のエキスパートが語る“夏野菜”講座」を開催しました。
 江戸東京野菜の内藤とうがらし、内藤カボチャ誕生の地である新宿御苑を会場に、江戸東京野菜をめぐるさまざまな動きをお伝えする講座です。
 
 今回は「江戸東京野菜」の認定に関わっておられる、JA東京中央会の水口均氏を講師にむかえ、歴史の中で消えていった幻の江戸野菜、そして新しい江戸東京野菜の発掘と認定をテーマに講演が行われました。
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 江戸東京野菜とは名前のとおり、江戸(東京)の地で生まれ、はぐくまれた野菜です。
 一番の特徴が「練馬大根」「雑司ヶ谷ナス」「谷中ショウガ」というように地名が付いていることです。それぞれの野菜には地域に根差した物語があり、江戸から昭和の各時代に江戸(東京)で暮らす人々の食生活を支え、食文化をはぐくんだ歴史があります。
 
 江戸東京野菜は平成28年7月現在で42品目が登録されていますが、なかには惜しくも歴史の中で消えていった野菜が数多くあります。なくなってしまった理由はさまざまですが、大きな理由のひとつに、東京の都市化が進み、農地がなくなってしまったことにあります。
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 たとえば、足立の水セリは都市化によって姿を消した野菜のひとつです。
 足立区は大きな河川の下流域にあたり、かつては豊富な水を利用した水セリ栽培がおこなわれていました。足立のセリは「東京セリ」として長らく市場を独占していましたが、昭和40年代に入ると、地域の都市化が進み、セリ栽培も次第になくなってゆきました。
 
 もうひとつ大きな理由が、野菜を食べる人がいなくなってしまうことです。
 春キャベツの中野甘藍は、明治15年(1882)頃、西洋野菜の将来性に注目していた葛飾区細田の篤農家・中野藤助の栽培研究の末に生まれました。明治44年には近隣の農家に栽培が広がり、南葛飾郡内の栽培面積は45ヘクタールにまで達したそうです。
 ところが近年は、春キャベツそのものの需要の減少により、姿を消してしまいました。その理由は、消費者の好みがふんわりと軽やかな春キャベツから、みっちりと葉が詰まり重たい冬キャベツを求めるようになったことがあげられます。
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(写真:春キャベツと冬キャベツを区別できるかな?)
 
 伝統的な和食における、貴重なたんぱく源だった「大豆」も幻となった野菜のひとつです。かつては、東京八重生(中野)や青梅在来(青梅)、鑾野在来(檜原)など、さまざまな在来の大豆がありました。ひと昔前は家庭で大豆を作り、味噌なども自家製という時代でしたが、このころに使われていた大豆たちだったと考えられています。
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 さて、大豆を使った代表的な日本の食べものといえば「豆腐」ですね。そのはじまりは、鎌倉時代に肉食を避ける禅宗の僧侶によって精進料理として用いられたこととされています。その後、豆腐は貴族階級に伝わり、室町時代には茶道とともに、懐石料理の一品として日本各地へ広まってゆきました。
 大豆や豆腐は、江戸時代には庶民の暮らしの中にすっかり浸透していたようで、枝ごとゆでた大豆を売り歩く「枝豆売り」という生業もあるほど人々に親しまれていました。
 また、江戸時代に発行された「豆腐百珍」には283種の豆腐料理がまとめられ、当時はベストセラーになったそうです。
 
 江戸東京野菜も含め、伝統的な古典野菜は小ぶりなものが多くあります。しかし、同じ種類の野菜が、同じ値段で店頭に並ぶと、より大きくて重たいものが選ばれてしまいがち。
 また、人々の食生活や暮らしの変化によって、家庭で使われなくなり、姿を消してしまったものもあります。
 こうしたさまざまな理由から、一度、絶えた伝統野菜が復活を果たすのは簡単なことではありません。野菜を育てる人はもちろんのこと、野菜を食べる人がいることも大切です。
 
 そのため、江戸東京野菜に認定されるにはいくつかの条件をクリアする必要があります。
 栽培された時期が江戸期から昭和中期であることや、産地の歴史や風土、品種固有の特性が明らかであるのはもちろんのこと。東京の生産者が現在も栽培をし、販売を目的とした生産があること等が条件になります。
 御苑ゆかりの「内藤とうがらし」や「内藤カボチャ」をはじめ、現在、江戸東京野菜に登録される42品目は、こうした苦難を乗り越えて、見事に復活を果たした野菜ともいえますね。
 
 日本各地にはそれぞれの地域に根付いた野菜と、野菜にまつわる歴史や食文化があります。東京にもまた、江戸時代より種から種へと命を繋いでいる野菜があります。
 東京の農業と食文化を守り、未来につないでゆくために、現在も栽培・研究や、復活の取り組みの輪は広がり続けています。
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 次に、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会理事で野菜ソムリエの上原恭子氏より「食材としての江戸東京野菜」をテーマに、レシピの紹介と試食会が行われました。
 今回ご紹介するのは「谷中ショウガ」「早稲田ミョウガ」「馬込半白キュウリ」です。
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 まずは素材のまま、野菜本来の味を楽しみました。
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 続いて、谷中ショウガの肉巻き、早稲田ミョウガのせ炊き込みご飯、後閑晩生小松菜のクレープ風の3品のメニューを試食しました。
 参加者の方には特に、早稲田ミョウガのせ炊き込みご飯が好評で、レシピをたずねる方も多くいらっしゃいました。
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 最後にレストランゆりのきの山中シェフが、本日のイベントだけのスペシャルメニューとして、鳴子ウリを使ったシャーベットをご紹介しました。
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 新宿御苑では普段より、レストランゆりのき、カフェはなのきにて、江戸東京野菜や東京産の食材を使用した地産地消メニューをご紹介しております。
 ご来園の際には、ぜひお立ち寄りください。
 

2016年7月17日 17:00

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