食育講座「新宿御苑STUDY&CAFE」を開催しました

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 本日、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会と国民公園協会新宿御苑の主催により、「新宿御苑 STUDY&CAFE vol.2『内藤新宿試験場と福羽逸人~現代に受け継がれる知られざる新宿御苑の歴史~』」を開催しました。江戸東京野菜をめぐるさまざまな動きをお伝えする講座で、30名の方にご参加いただきました。
 
 講座では、新宿御苑における農園芸と皇室庭園の歴史についての講演会と、皇室庭園時代の宮中晩餐会のメニューを、江戸東京野菜や御苑ゆかりの食材をもちいてご紹介しました。
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 まずはじめに国民公園協会新宿御苑 広報企画担当の本荘暁子が、「内藤新宿試験場と福羽逸人~現代に受け継がれる知られざる新宿御苑の歴史~」をテーマに講演を行いました。
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 新宿御苑のルーツとなった高遠藩主内藤家の屋敷地跡に、近代農業の技術改良と試験栽培を総合的に行う「内藤新宿試験場」が誕生したのは明治5年(1872)のことです。
 内藤新宿試験場では、西欧から近代農業技術を取り入れ、外国産の野菜や果物、樹木、花卉の収集・栽培や、養蚕、牧畜など近代農業の研究、人材育成、民間への普及などが幅広く行われていました。
 その後、内藤新宿試験場は、農学校、皇室御料地、皇室庭園へと発展してゆきます。
 
 日本における農園芸や造園、皇室庭園の歴史にも深いかかわりがありながら、あまり知られていない新宿御苑の歴史。その中で主導的な役割を担っていたのが、近代園芸の祖といわれる福羽逸人です。
 講演では、当時の新聞記事や資料を紐解きながら、新宿御苑の歴史と福羽逸人の歩みを振り返りました。
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 福羽逸人は安政3年(1856)に石見国(現在の島根県津和野)に生まれ、明治5年(1872)、16歳の時に内藤新宿試験場の実習生となりました。その後、明治11年からの農事修学場の勤務を経て、明治31年には新宿御苑の総責任者にまでのぼりつめました。
 
 福羽が御苑で手がけた事業のなかで、代表的なもののひとつが日本初の国産イチゴ「福羽イチゴ」の作出です。ふつうイチゴを半分に切ると中は白色ですが、福羽イチゴは中が真っ赤。実もやや面長な形をしているのが特徴です。「とちおとめ」や「あまおう」など、現在、日本で食べられている多くのイチゴ品種も親元をたどってゆくと福羽イチゴにつながります。
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 このほか、無加温室でのブドウやメロン栽培や明治33年(1900)のパリ万博への菊の大作りの出品、パレスガーデンとしての御苑の大改造など、数多くの功績を残しました。
 
 福羽は海外への留学経験を通し、お客様をまずお招きする場所として「すぐれた国にはすぐれた庭がある」と考え、新宿御苑を日本初の皇室庭園へと改造することを決意します。明治39年に庭園が完成した当時は、戦火の影響が色濃い不穏な時代ではありましたが、福羽は庭園に咲き誇る花や木を通して、人々の交流と平和を願っていたのではないかと考えられます。
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(写真:明治39年に皇室庭園「新宿御苑」が完成。日露戦争祝賀会を兼ねた開園式が催されました。)
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(写真:皇室行事「観桜会」は、内閣府主催の「桜を見る会」として現在も継承されています。)
 
 また、福羽逸人は御苑の発展に貢献したばかりではありませんでした。当時の新宿御苑は宮中の御料農場でしたが、野菜や果物、花きの栽培研究のほか、民間への普及にも力を入れていました。全国の試験場の運営にも協力し、明治12年(1879)には「神戸オリーブ園」、翌13年には「播州葡萄園」を開設しました。
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 その後、福羽逸人は新宿御苑の総責任者を務めたあと、大正3年(1914)に58歳で大膳頭(だいぜんのかみ)に任命され、大正天皇の即位礼「大饗」の統括指揮を任されました。この抜擢には福羽自身も「予想外の人事であった」という驚きがあり、また「千載一遇の機会」との思いで承諾したと後に語っています。
 16歳で内藤新宿試験場の実習生となり、野菜や果物の栽培からはじまった福羽と農園芸の関わり。最終的には宮中晩さん会の料理や空間までもを含めたトータルマネジメントに手腕を発揮するまでになってゆきました。
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 福羽逸人は、昨年、話題になったテレビドラマ「天皇の料理番」でも、大正天皇ご即位の礼の宮中晩さん会のエピソードで、主人公・秋山徳蔵の上司として登場しました。ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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 福羽は、実際に指揮した大正天皇の即位礼「大饗」においても、国産食材のみを用いたメニュー作りにこだわり、ザリガニは実際に北海道まで出向き、自らの舌で素材の味を確かめて、メニューに取り入れたそうです。
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 講座後半では、大正時代の宮中晩さん会をモチーフにしたメニューを実際に召し上がっていただきました。
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(写真:ウチダザリガニのマリネ)
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 レストランゆりのきの伊藤秀雄総料理長が、江戸東京野菜と御苑ゆかりの食材をふんだんに使用し、季節感やアレンジを加えたオリジナルメニューをご紹介しました。
 江戸東京野菜からは、新宿ゆかりの内藤とうがらし、内藤かぼちゃをはじめ、拝島ネギ、亀戸ダイコン、馬込三寸ニンジン、ノラボウ菜、東京ウド、後関晩生小松菜、奥多摩ワサビ、早稲田ミョウガタケが登場しました。また、御苑ゆかりの西洋野菜のオリーブやハーブ、エディブルフラワーが華やかな彩りを添えます。
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 大正時代の宮中晩さん会ではレタスとキュウリが使われたサラダは、旬のミョウガタケと東京ウド、キウイフルーツを使ったサラダにアレンジされました。
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 デザートの内藤かぼちゃのモンブラン仕立ては、かぼちゃの自然な甘さをいかしたピューレでデコレーションされています。
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(写真:本日のメニュー)
 
 伊藤料理長からは今回のメニューのコンセプトとして「御苑は何といっても西洋野菜や果物の発祥の地。江戸東京野菜や西洋野菜など野菜を主役に、魚や肉はわき役としてメニュー作りをしました。何気なく使われているものでもすべて御苑ゆかりの食材です」との解説がありました。
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(写真:内藤とうがらしのほうじ茶)
 
 参加者の方からは、ザリガニのビスクスープの美味しさに感激なさる声や、サラダの素材である旬のミョウガタケの柔らかさに驚く声のほか、「お料理の一品一品に気くばりがありますね」という感想もいただきました。また、テレビドラマ「天皇の料理番」をご覧になったという方からは、作中で生けすから逃げ出すエピソードで描かれていたザリガニを、現代で実際にこうして食べることができて感動しました、という声も寄せられました。
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 最後に、NPO江戸東京野菜コンシェルジュ協会会長の大竹道茂氏が、今日の料理に登場した江戸東京野菜を紹介しました。早稲田ミョウガタケはちょうどいま収穫がはじまったばかりの初もの。旬のこの時期に、なんと新宿区の小学校の給食にも登場するそうです。
 
 新宿御苑のレストランゆりのき、カフェはなのきでは、普段より江戸東京野菜や御苑ゆかりの野菜、果物を使ったメニューを提供しています。新宿御苑にご来園の際は、ぜひお楽しみください。
 
【ご利用案内】
 ■レストランゆりのき(園内/新宿門より徒歩3分)
 ■カフェはなのき(インフォメーションセンター/園外の無料区域)
 利用時間/9:00~16:00(ラストオーダー)
 定休日/新宿御苑休園日

2016年2月13日 15:00

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