2010新宿御苑フォトコンテスト入賞作品

【主催者挨拶】
 「2010新宿御苑フォトコンテスト」は、カメラを通して新宿御苑の自然の素晴らしさを感じ楽しんでいただくため平成3年度から開催され、今年で20回目を迎えました。
 今回は、歴代4番目となる2038点の作品の応募があり、また、応募者数も543名と開催史上4番目に多く、北は岩手から南は沖縄まで、全国各地からご応募いただきました。作品はいずれも甲乙つけがたい力作ばかりで、このほど厳正な審査を経て入賞作品が選ばれました。写真を通して、新宿御苑の四季折々の表情と自然の美しさを楽しんでいただければと思います。
 フォトコンテストの実施及び写真展の開催にあたり多大なるご支援をいただきました、環境省新宿御苑管理事務所、富士フイルム株式会社ならびに関係各位に厚く御礼申し上げます。

平成22年3月23日
財団法人 国民公園協会新宿御苑 会長 福澤 武


【審査員総評】
 新宿御苑のフォトコンテストは今年で20回目を迎えました。百余年の歴史を持つ御苑の中で、ここを訪れた人々が四季折々の自然の様々な営みや表情を写して応募され、その中から選抜された作品の数々は将来新宿御苑の歴史を語る上で貴重な資料となります。
 写真は誕生当初から芸術性が注目されましたが、それと並んで重要なのが記録性です。幕末に渡来した写真術はその後国の重要な産業として成長し、今や一家に一台どころか全員が何らかのカメラを持つに至っています。
 苑内を歩くと一眼レフから携帯電話まで様々な撮影スタイルを目にしますが、色々な視点で数多く写されることこそ傑作誕生の基です。今や日本全国から作品が寄せられるこのコンテストですが、都会の多くの公園で撮影してきた私にとってもこれだけ変化に富み、安全で気軽に撮影を楽しめる公園は多くありません。里山や武蔵野の雰囲気に浸れる母と子の森やモミジ山、日本庭園やイギリス風景式庭園、フランス式整形庭園の形式美、豊富な植生とビル群の借景等々、撮影者の発想次第で無限な画面を創造できる場所だと思っています。この場所が皆さんの財産であることを忘れず、マナーを守って撮影して頂きたいと思います。また、今後も多くの方々がここを訪れ、御苑が見せてくれる様々な表情を楽しみながら写し、さらに多くの作品が寄せられることを願っています。

審査員 : 写真家・木村正博
写真家・岡本洋子


 環境大臣賞

「窓辺の彩り」  鴻巣 一夫 (千葉県)

 〈講評〉 旧洋館御休所脇に咲く八重桜と、それがホールの窓ガラスに映る様子に目を留められた視点が活きています。古びた建物の桟や、少し波打った板ガラスの様子が歴史を感じさせ、単純な構成の中に春の御苑の様子を静かに伝えているのが印象的です。

(撮影日:2010年4月29日 *撮影場所:旧洋館御休所)

 環境省自然環境局長賞

「雪の御苑」  和田伊豆男 (東京都)

 〈講評〉 新宿御苑に雪が積もるのは一年に何回もありませんが、イギリス風景式庭園の端で見付けた光景を、実に単純な画面にまとめられました。暗い背景に立つ冬枯れのエドヒガン桜と敷き詰めた雪、それに赤い上着の人物の対比が見る者の目を引き付けます。

(撮影日:2010年2月2日 *撮影場所:イギリス風景式庭園)

 環境省新宿御苑管理事務所長賞

「雪のロールケーキ」  森本 健 (東京都)

 〈講評〉 兄弟でしょうか。この子達は初めて雪と遊ぶのかな? と微笑んでしまう画面です。雪玉を転がした後に芝生が露出しているのが都会の公園らしく、白く雪を載せた木々の様子が前夜の吹雪を連想させます。

(撮影日:2008年2月3日 *撮影場所:イギリス風景式庭園)

 財団法人国民公園協会新宿御苑会長賞

「落日」  北岡 義久 (東京都)

 〈講評〉 御苑で落日を写せるのは立冬から冬至の間で、私もこの時期に訪れると閉苑ギリギリまで粘ることがしばしばです。作者もその時期を狙い、センペルセコイアの向こうに沈む夕日と空の様子で構成していますが、雲の形と深い空の色が効果的でした。

(撮影日:2010年12月1日 撮影場所:イギリス風景式庭園)

 特選 (10点)

「春彩」  池口 保 (東京都)

 〈講評〉 母と子の森入口に咲くハチジョウキブシとヨウコウは、3月下旬に新宿門から苑内に入るとまず目に飛び込んできます。萌黄色と濃いピンクの対比は春らしさを強調できる被写体で、そこに目を向けられたのが活きています。

(撮影日:2010年3月27日 撮影場所:母と子の森)


「冬華の道」  小川ゆきよ (東京都)

 〈講評〉 ラクウショウを廻る木道に落ち葉が作り出す模様と、そこに当たった斜光線が作り出した光景を素直な視線で捉えています。縦の画面で撮影しているため画面に奥行き感が加わり、すぐ側の喧騒から遥かに遠い場所のような印象を与えます。

(撮影日:2010年12月22日 撮影場所:母と子の森)


「風走る」  奥村 順一 (神奈川県)

 〈講評〉 茶色の芝生に落ちた枯葉を巻き込み、まるで野分けのように走り過ぎる風を捉えています。いいシャッターチャンスを的確に捕まえていますが、カメラの位置をもう少し高くすると、風に舞う落ち葉の様子に奥行き感を加えられたでしょう。

(撮影日:2010年12月3日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「母と子の詩」  小西 直昭 (埼玉県)

 〈講評〉 三本ユリノキの幹に映った大小の影に眼を止め、詩情豊かな画面を作っています。光の具合から初冬の午後でしょうが、小春日和の苑内で遊ぶ親子の楽しげな様子が暗示されているのがいいですね。

(撮影日:2010年12月8日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「玉藻池の晩秋」  斎藤 潤子 (東京都)

 〈講評〉 玉藻池で餌を狙う白鷺を、大きく捉えているのがいい写真です。画面右からの低い斜光線が秋の深さを感じさせ、暗く落ちた背景に写り込んだ枯れ草なども、これから訪れる冬を予感させます。

(撮影日:2009年12月17日 撮影場所:玉藻池)


「雨のち秋晴れ」  崎田 憲一 (東京都)

 〈講評〉 着眼点がいいですね。芝生にできた大きな水溜りと、そこに写る青い空と白い雲で雨上がりの様子を強調し、周囲に広がった茶色みを帯び始めた芝生で秋の訪れを見せた構成力が活きています。

(撮影日:2010年11月23日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「忍耐」  瀧川 清香 (東京都)

 〈講評〉 御苑には桜の古木が多く在りますが、そのいずれもが趣のある姿を持っています。この樹もそれに違わず、枝先まで咲いた満開の花を重たげに捧げていて、作者が忍耐と題にされた印象が、写真を見る者に伝わってきます。

(撮影日:2008年4月19日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「霧雨慕情」  畑 耕逸 (千葉県)

 〈講評〉 木の芽が萌え出した晩春、霧雨が降る苑内を散策する二人の後ろ姿を遠目に捉え、情緒ある画面を作り出しています。緑が勢いを増した芝生や、萌黄色の木々の葉の中に、薄いピンク色の傘の色が効果的な添景となっています。

(撮影日:2010年4月23日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「秋冬の黄昏」  福田 渉 (神奈川県)

 〈講評〉 秋と冬の黄昏時を、苑内各所で写して4枚組にまとめられています。御苑の黄昏は晩秋から初冬までの時期が撮影に適していますが、その期間に何度も通われた努力が実りました。組み写真は写真の内容と組み合わせ方が難しいのですが、テーマの決め方と内容がマッチして成功しています。

(撮影日:2010年12月3日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「春の予感」  細川 礼夫 (神奈川県)

 〈講評〉 広角レンズでまだ外套を着ているハクモクレンの花芽に近付き、光を注ぐ太陽と組み合わせた大胆な構図が成功しています。主役の芽の背後が暗く落ち、他の芽や枝の絡み合いが目立たないようにしているのも効果的でした。

(撮影日:2010年2月6日 撮影場所:イギリス風景式庭園)

 入選 (20点)

「水上の走馬灯」  生澤 美恵子 (東京都)

 〈講評〉 落ち葉の流れが渦を巻いて筆で描いたような筋になっています。スローシャッターを使用してのカメラならではの表現ですね。止まって動かないところとの対比が面白い秋の一コマです。

(撮影日:2010年12月12日 撮影場所:母と子の森)


「なーにかなぁ?」  伊戸 明博 (東京都)

 〈講評〉 かわいらしい男の子が一心不乱に落ち葉で遊んでいます。水平線が曲がっていますが主題の被写体の動きに合わせているので動きを感じます。男の子の顔や表情がもう少し見えているとよかったですね。

(撮影日:2010年12月5日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「落ち葉の季節」  太田 洋之 (東京都)

 〈講評〉 目の前の落ち葉の上に鎮座ましますカマキリと、遠景には秋を楽しむ人々、都会のビル群。かなりの広角レンズでおもいっきりカマキリに寄って撮っています。まるで虫になったようで、カマキリの緊張感が伝わってくるようです。

(撮影日:2010年12月1日 撮影場所:フランス式整形庭園)


「次の命」  小笠 豊 (東京都)

 〈講評〉 これを見つけた時には、よくもまあこんなところにもスミレが咲くなんて!という驚きとともに生命力の強さも感じられたのではないでしょうか。作者の観察力と小さな命への優しい眼差しを感じます。

(撮影日:2010年3月22日 撮影場所:中の池近く)


「枝垂見物」  岡本 宗佳 (千葉県)

 〈講評〉 枝垂れ桜の大木を素直に画面いっぱいにフレーミングしています。技巧的ではない分、桜の樹の力強さを感じます。青い空も桜の黒い幹や淡いピンク色を浮き立たせていていい背景になっています。

(撮影日:2010年4月3日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「猛暑の日に」  角田 抄南枝 (東京都)

 〈講評〉 面白い一瞬をスナップしましたね。白鷺が背筋を伸ばして、まるで人間のようにフランス式整形庭園を散歩しているかのようです。このような好機にも冷静にピントを合わせ、鳥の歩く向きの前方の空間を開けてフレーミングしています。

(撮影日:2010年8月25日 撮影場所:フランス式整形庭園)


「落葉道」  菊池 征祐 (東京都)

 〈講評〉 園路も芝生の地面も一面に落ち葉に覆われています。奥へカーブして続く園路が画面に奥行き感をもたらしています。曇天の白い空がやや目立つのですが、空を覆う枯葉と木々の並びのラインが欠点をカバーしています。

(撮影日:2010年11月14日 撮影場所:日本庭園)


「秋を映す」  木村 耕二 (東京都)

 〈講評〉 水面への紅葉の映り込みを撮られています。紅葉がとても美しい場所なのでたくさんのカメラマンが集まる撮影スポットです。ゆるくカーブした水路の奥行き感もあって秋の風情が画面から伝わってきます。

(撮影日:2010年11月25日 撮影場所:下の池)


「静寂」  小泉 正 (東京都)

 〈講評〉 旧御凉亭の屋根にうっすらと積もった雪の白さが池に反射しているのが美しい造形です。東京では雪が降り積もらなくなりましたので、貴重なタイミングで、御苑に来て撮影しようという熱意が感じられます。

(撮影日:2010年2月2日 撮影場所:日本庭園)


「興味津津」  小林 礼子 (埼玉県)

 〈講評〉 面白い一瞬をスナップしましたね。思わずくすっと笑ってしまいました。大作りの菊の前でしゃがんで根本を確認している人たち。“これって本当に一本の茎から咲いているのかしら”という声が聞こえてきそうです。

(撮影日:2010年11月21日 撮影場所:日本庭園)


「安らぎ」  酒井 義隆 (茨城県)

 〈講評〉 秋の落ち葉を敷き詰めた公園の片隅のベンチに老夫婦がじっと腰かけています。ベンチと奥の黒い柵が2本の大木の間に配置され、構図の上手さも感じます。柔らかな秋の日差しの中で二人の時間が止まっているかのようです。

(撮影日:2010年11月18日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「散り紅葉」  佐藤 慶太郎 (神奈川県)

 〈講評〉 全面落ち葉で覆われた中に一筋の水の流れ。このような面白い状況を見つけだす着眼点がいいですね。紅葉見物の人たちも減ってひっそりとした都会とは思えない深山のような光景です。

(撮影日:2010年11月30日 撮影場所:母と子の森)


「落ち葉に想う」  清 嘉忠 (東京都)

 〈講評〉 手前と奥の人物の歩くという動作がシンクロする一瞬のシャッターチャンスを狙った動きのある作品です。女性のブレ感もアクセントになっています。奥の人物の前方をもう少し空けた一回り余裕のあるフレーミングだとよかったでしょう。

(撮影日:2010年11月30日 撮影場所:日本庭園)


「梅柄小紋」  富永 賢 (東京都)

 〈講評〉 これは何の影でしょうか?タイトルには梅柄小紋とありますので、梅の影でしょうか。網目模様の造形的なパターンが面白いです。これに着目して撮られた作者は個性的でセンスが光ります。

(撮影日:2010年5月13日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「水辺の桜」  中谷 裕 (東京都)

 〈講評〉 雲一つない春の穏やかな日差しに池を縁取る満開の桜の花も喜びにあふれているようです。青空だったのが幸いしてドコモタワ―を入れた空が多めの構図を生かすことができました。

(撮影日:2010年4月9日 撮影場所:中の池)


「木漏れ日」  林 武正 (埼玉県)

 〈講評〉 一本の木の長い影を広角レンズで効果的に捉えています。影を多くしたフレーミングは主題をはっきりさせていますが、逆光に透き通る葉っぱもきれいなのでもう少し多めに画面に入れてもよかったでしょう。

(撮影日:2009年11月28日 撮影場所:イギリス風景式庭園)


「都心での木登り」  古田 敏子 (神奈川県)

 〈講評〉 御苑で行われたイベントの一コマですが、ロープやヘルメットなどの装備、登る高さを見るとかなり本格的な木登りです。人物の位置が重ならないように上手くフレーミングしています。記録写真としても貴重な一枚です。

(撮影日:2007〜2008年ごろ 撮影場所:母と子の森)


「老樹の印象」  古幡 佑助 (埼玉県)

 〈講評〉 今にも倒れそうな老木の、花びらをまとった姿がもの悲しく感じられます。池を背景にして樹形の美しさと散った桜の花びらで上手くまとめました。じんわりと心に沁みる情緒的な作品です。

(撮影日:2010年4月9日 撮影場所:中の池)


「春が散る」  水落 銃三 (東京都)

 〈講評〉 地面や木の幹もしっとりと濡れて雨あがりでしょうか。散り桜が一面敷き詰められた地面に赤くて艶やかな椿の花が落ちています。ちょっとアンダーな露出ですが、春の風情を感じる作品です。

(撮影日:2010年4月10日 撮影場所:園内)


「秋のバラ」  本橋 省吾 (東京都)

 〈講評〉 かなりの広角レンズで手前にバラを入れて遠景に広がるフランス式整形庭園と空を上手くフレーミングしています。広角レンズならではの遠近感の誇張が面白い効果を与えています。レンズの特性を上手く生かして成功しています。

(撮影日:2010年12月1日 撮影場所:フランス式整形庭園)

 (子供の部)大好き新宿御苑賞 (3点)

「自然のアート」  後村 祐哉 (東京都)

 〈講評〉 左右の樹の幹を上手くフレーミングして安定した構図になっています。まるで大人が撮ったような落ち着いた雰囲気のある写真です。 秋のしっとりとした気配が漂います。

(撮影日:2010年11月14日 撮影場所:フランス式整形庭園)


「新宿のバラ」  加藤 優旗 (東京都)

 〈講評〉 バラを大胆に手前に入れることで背景のドコモビルと同じくらいの大きさになっています。構成要素がシンプルですが、優しいこの日の空とピンク色のバラが穏やかな御苑日和を想像させます。

(撮影日:2010年11月20日 撮影場所:フランス式整形庭園)


「何の穴かな?だれの家」  舟山凜太郎 (神奈川県)

 〈講評〉 子供らしい視点を持った写真ですね。プラタナスの幹の形の面白さに注目したのでしょう。 まるで怪獣か何かの顔のようにも見えますし、タイトルにあるように何かの棲家のようにも見えます。

(撮影日:2010年12月5日 撮影場所:フランス式整形庭園)


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