<特集>~皇居外苑の濠水浄化施設について~

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 皇居外苑の特色ある景観を構成する上で、極めて重要な役割を担う「お濠」。皆さんは皇居を取り巻くお濠が一体いくつあるか、ご存知ですか?

 

 環境省所管の皇居外苑の濠は、桜田濠、凱旋濠、蛤濠、半蔵濠、千鳥ヶ淵、牛ヶ淵、清水濠、大手濠、桔梗濠、和田倉濠、馬場先濠、日比谷濠の12の濠から成り立っています。その総面積は37万㎡で東京ドーム約8個分。平均水深は1.25m、総湛水量は約45万㎥にもなります。(このほか、皇居には宮内庁の管轄する濠があります)

桜田門と桜田濠.jpg

(桜田濠)

 

 

 

 

 

 

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(凱旋濠)

 

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(半蔵濠)

 

 お濠の成り立ちを振り返ると、ほとんどの濠は江戸時代はじめに造成されました。江戸城の前面には当時、日比谷の入り江が広がっており、幕府は江戸城の防衛と城下の治安維持のため、諸大名に命じて濠の整備を進め、本丸を中心に幾重にも濠を張り巡らせました。

 

 江戸時代から明治時代の中頃までは、お濠は江戸の六上水の一つである「玉川上水」と接続しており、玉川上水は最も水位の高い半蔵濠、千鳥ヶ淵に流れ込んで、各濠の水門を順繰りに下りながら、最も低位の日比谷濠から江戸湾(東京湾)に流れ出るという「きれいな水の循環」が作られていました。

 しかし時は流れ1965年(昭和40年)。それまでお濠に流れ込んできていた玉川上水が完全に廃止され、きれいな水の供給は途切れ、お濠の水はほとんど雨水に頼らざるを得なくなりました。それに加えて、外苑濠には長年にわたり周囲からの落葉等が流れ込み、一定の雨が降ると東京都の合流式下水道から下水が雨水と共に濠に流入する状況が続いてきました。外苑濠の水質は徐々に悪化し、夏から秋にかけてアオコの発生や悪臭が問題となっている他、外来魚が侵入し、在来の生物を圧迫するなどの問題も発生しています。

 

千鳥ヶ淵.jpg

(千鳥ヶ淵)

 

牛ヶ淵.jpg

(牛ヶ淵)

 

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(清水濠)

 

 このような状況を受け、濠を管理する環境省では、平成7年から濠水浄化施設の運用を行うなどの対策を行ってきました。これにより、水質は一定改善を見せており、桜田濠、蛤濠に至っては、水質が改善されアオコの大量発生はほぼ解消されました。一方で、千鳥ヶ淵、その下流にある清水濠、大手濠等では水質の改善傾向はみられるものの、以前としてアオコの大量発生が見られる状況が続いています。

 

 このため、環境省は、平成2年に「皇居外苑濠管理方針及び水質改善計画」を策定しました。これは、東京都が下水道から濠への越流を平成27年までに原則防止する対策を進めていることを受けたものです。

 

計画の中心的な対策となるのが、平成25年4月から運転を開始している「新濠水浄化施設」。この新しい浄化施設は、「高速凝集沈殿方式」という方式を採用したもので、浄化性能が高く、一日当たり最大2万tの濠水を浄化する能力があります。これは、既存の施設に比べると約40%の向上です。浄化施設では、日比谷濠から取水した濠水を浄化し、送水管で桜田濠と半蔵濠に送水し、放流しています。放流された水は、各濠を巡り、最終的に再び日比谷濠に戻ってくることになります。

 

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(環境省管理事務所横の浄化施設)

 

 また、国民公園協会皇居外苑では、回収が遅れると、美観を損ねるだけでなく、沈殿し腐敗分解され、生息する生き物にも悪影響を及ぼすお濠へ投棄されたゴミの点検等、毎朝実施しています。

 

 現段階での施設の規模構成等は、日比谷濠、桜田濠にそれぞれ37KWのポンプ3台の取水設備が整備されている他、管理事務所横には浄化設備(施設棟と12槽の濾過槽)や浄化設備から分水設備へと濠水を送る、2003年の送水管が整備されています。放流箇所は桜田濠、半蔵濠、二重橋前の三箇所で、運転期間は4~11月です。

 

大手濠.jpg

(大手濠)

 

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(日比谷濠)

 

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(和田倉濠)

 

 これらの施設稼動により現在水質は一定の改善を見せており、桜田濠、蛤濠に至っては、水質が改善されアオコの大量発生はほぼ解消されました。一方で、千鳥ヶ淵、その下流にある清水濠、大手濠等では、水質の改善傾向はみられるものの、依然としてアオコの大量発生が見られる状況が続いていますが、東京都の下水道対策の効果と併せて、今後数年間でアオコの大量発生は解消される見込みとなっています。

 

 また、濠水浄化施設の運用改善、濠の底泥対策、良好な補給水の確保、水生植物との共生と適切な管理など、今後、長期的な取り組みが必要な対策などの課題も存在しています。

 平成32年に開催される、東京オリンピック、パラリンピックにおいては、皇居外苑は、いくつかの競技会場となる予定であり、外苑濠も衆目を集める状況が予想されます。水質の悪化する夏季の開催であることから、追加的な対策が必要な可能性があります。

 このため、環境省では、現在の水質改善計画を見直し、第2期水質改善計画(水環境改善計画)を策定することとし、昨年度より検討を開始しています。

蛤濠.jpg

(蛤濠)

 

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(馬場先濠)

 

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(桔梗濠)

 

 皇居の前庭として、「日本の顔」とも言える我が国の代表的な景観を構成する要素の一つとして、重要な役割を担う皇居外苑のお濠。今後も環境省指導の下、国民公園協会皇居外苑は、歴史遺構の継承、生物の生息・生育環境の改善に向け、日々業務に取り組んでいきます。

 

2015年10月 6日 10:04

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